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vol.60

ZIKICO(ジキコ)

味を変えないスプーンやフォークなどのカトラリーを作る会社が多摩市にあるのをご存知だろうか。

株式会社ZIKICOは「ジルコニア」という鉱物由来のセラミックに特化したプロダクト「ZIKICO」(ジキコ)を作る会社だ。

「ZIKICO」の最大の特徴は、素材の味を損なわずにそのまま味わえることだ。金属アレルギーの方も使える人に優しい製品として、グッドデザイン賞やJIDAデザインミュージアムセレクション賞、世界最大の国際デザインコンペ、A’ Design Awards2019のゴールド賞など世界的な評価を得ている。しかし、ここまでの評価を得るまでにはかなりの紆余曲折があったという。

今回は株式会社ZIKICOの代表取締役、山瀬光紀さんにお話しを伺った。

ジルコニアとの出会い

山瀬さんは1978年生まれの43歳。

祖父は府中市で精密樹脂部品の製造会社を創業。山瀬さんの父が2代目となり、35年ほど前に多摩市に移転してきた。3代目となる山瀬さんは玉川大学工学部機械工学科を卒業後、2001年にドイツの射出成型機メーカー「ARBURG」(アーブルグ)に入社。その研究室在学中に「ZIKICO」の原点となる「ジルコニア」に出会った。

ジルコニアはダイヤモンドやルビーに次ぐ硬さをもった鉱物由来の素材だ。宝石のような硬さがありながらも金属のようにしなやか。磁器の一種(セラミックス)でノンアレルゲンであることから、人工歯(インプラント)や人工関節に用いられてきた。

「今までにないものが出来る」山瀬さんはそう直感したが、研究室の所長からはジルコニアは同じセラミックスのアルミナよりも耐熱性が低いことや、埋蔵量が少なく価格が高いことから工業用では市場がないと言われたそうだ。

ジルコニアを作って何か製品が出来ないかといろいろとアイデアを巡らせていた頃、ドイツの友人から日本食を作ってくれないかと頼まれたという。

「そばつゆを作ろうと出汁をとってスプーンで味見してみると、まったく味がしなかったんです。おかしいなと思って、陶器のお皿で飲んだみたら味がしました。そこで金属のスプーンだと味が分からなくなっちゃうんだと気づきました」

その経験が基となり、山瀬さんはジルコニアでスプーンなどのカトラリーを作れば、食事がおいしくなるのではないかと考えたという。

開発期間10年。新会社を設立

その後、日本に帰国した山瀬さんは2007年にジルコニアの研究部門を設立。製品開発に取り掛かるが、ジルコニアを加工する上で山瀬さんを悩ませたのは焼結する際に大きく収縮してしまうことだった。

スプーンの先端の部分をジルコニアで作り、柄の部分はコストを下げるためPPSという耐久性の高い特殊な樹脂で作った。しかし、ジルコニアは焼結すると30%収縮するのに対し、PPSはわずか1%しか収縮せず、製品にする際に大きな段差や隙間が生じてしまう。

山瀬さんはこれまで培ってきた繊細な製造過程を活かし、10年もの年月をかけて収縮率のまったく違う素材を組み合わせても段差や隙間のない製品を作り出す安定した加工技術を確立させた。

完成した製品は2017年にグッドデザイン賞を受賞。順調な船出と思いきや、同時期に山瀬さんは父から受け継いだ精密樹脂部品の製造会社の売却を決意する。

「当時の会社はプラスティックの成形加工をしていて、売上のほとんどがハードディスク事業でした。しかし5年くらい前からパソコンの記憶媒体がSSDに置き変わり、ハードディスクの売上が激減したんです」

その後、会社は部品製造会社に売却することが決まるが、ジルコニア部門は残らないことを一緒にやってきたチームの方に伝えたところ「せっかく賞をもらったんだから製品を販売したい。もう少し続けてみよう」との後押しもあり、山瀬さんは新会社「株式会社ZIKICO」を設立。2019年に「ZIKICO」のカトラリーシリーズ「SUMU」の販売を開始した。

製品の良さを分かってもらえるのが嬉しい

「ZIKICO」はこれまでにカトラリーシリーズの「SUMU」をはじめ、オールジルコニア製の「KIYO」、調味料の計量スプーンといった手に持つ道具「TEMO」の3つのシリーズを開発。一部の百貨店や店舗のほか、同社2階のショールームとオンラインショップでも製品を販売している。

味の違いを一番感じることができるのはゼリーを食べた時だという。口に入れた時に通常の金属製のスプーンは微量の金属イオンにより金属臭がするが、ZIKICOのカトラリーは、素材の味を損なわずにそのまま味わうことができる。

洗練されたデザインにも注目したい。「SUMU」のナイフはジルコニアのしなやかな素材のメリットを活かし、先端の厚みはとても薄く作られている。力を抜いて持つと刃が自然と下に向くように設計されていて機能的だ。

山瀬さんは「薄くて存在感もないので、より食事や会話を楽しむことに集中できます。『これいいね』と狙い通りに味の違いや製品の良さを分かってくださるお客様が多いので本当に嬉しいです。今後もZIKICOを通して、ジルコニアを多くの方に知ってほしいですね」と嬉しそうに語った。

多摩市の新たなプロダクト「ZIKICO」は日常生活にジルコニアを取り入れることで、食卓のひとときをより豊かな時間へと変えようとしている。

会社名
株式会社ZIKICO
住所
東京都多摩市永山6-21-3
URL
https://www.zikico.com/
山瀬光紀

株式会社ZIKICO 代表取締役


丘のまち物語/INTERVIEW ISSUE

多摩で暮らす人たちに軸を据えて、その暮らしぶりや思いなどを語ってもらいます。

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