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vol.67

「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」と「ゆぎ書房」

「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」は、「おおきなかいぶつ」と「ちいさなかいぶつ」が主人公の人気絵本シリーズだ。

先日、聖蹟桜ヶ丘の関戸公民館で開催された「ラスカル子ども映画祭(多摩市 ✕ (株)日本アニメーション共催)」では、親子で楽しめる国内外のアニメだけでなく「多摩市×アイスランド特別プログラム」の一環として、「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」の『まっくらやみのかいぶつ』アニメーションのスクリーン上映とそれに合わせて読み聞かせが行われ、多くの親子連れで賑わった。

今回は「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」の日本語版を出版し、多摩市でアイスランドに関するイベントも行っている「ゆぎ書房」代表の前田君江さんにお話しを伺った。

2020年に「ゆぎ書房」を設立

前田さんは長野県出身。15年前から八王子市に在住していて、大学時代はペルシア語を専攻。ペルシア文学をはじめ、詩などを研究しているうちに中東で絵本作家をしている詩人から譲り受けた絵本との出会いが前田さんの運命を変えた。

「勉強のために2年ほどイランに住んでいたことがあります。その後、イランやトルコ、アラブ首長国連邦、ジョージアなど、中東や周辺国の児童書店を巡り、その土地の絵本に魅了されました。そうした中で自分で企画を立て、出版社に持ち込みをして何冊か絵本出版を経験したのち、2020年に翻訳絵本の出版社「ゆぎ書房」を設立しました」(前田さん)

現在は「ゆぎ書房」を運営しつつ、東京大学にてペルシア語の授業を担当をするほか、常磐短期大学、女子美術大学などで絵本の魅力を伝える非常勤講師も務めている。

「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」日本語翻訳版を出版

「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」はスウェーデン、フェロー諸島、アイスランド出身の原作者(カッレ・ギュットレル、ラーケル・ヘルムスダル、アウスロイグ・ヨウンスドッティル)の3名が共同で創作した。2001年に北欧で開催のワークショップで創り上げた絵と物語を基にした絵本で、これまでに10巻が発売されている。

アイスランド本屋大賞(児童文学部門)、スウェーデン児童文学賞、フランス児童文学賞を受賞するなど、世界的にも評価が高い人気の絵本シリーズだ。

前田さんがこの「かいぶつ絵本シリーズ」にはじめて出合ったのは2015年頃のこと。その時点では日本語の翻訳本はなかった。

「多言語の書籍を扱っているカタログで見かけたり、ネット上でも何回も遭遇してたりして以前から気になっていましたが、日本ではなかなか手に入れることができませんでした」(前田さん)

その後、日本語での翻訳出版を視野にアイスランドの出版社から絵本の電子データを取り寄せて実際に読んでみると、前田さんがイメージしていたものとは違っていたことから、その時は一旦企画をとりやめたという。

「でも、登場する『かいぶつ』たちのビジュアルや好き勝手な言動、日本の絵本には見られない構成と独自の面白さに惹きつけられた自分がいました。今は『SGDs』や『多様性』などをキーワードにした翻訳絵本がたくさんあります。しかし、中には子どもが「おいてけぼり」になるような絵本もあります。絵本を探す時の軸として、子どもと一緒に読むことによって、はじめて面白さを発見できることも大切にしたいと考えていて、それに合致しているのがこの『アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ』でした」(前田さん)

日本語での翻訳出版を決意した前田さん。翻訳はアイスランドに在住しているアイスランド文学の研究者で翻訳者の朱位昌併(あかくらしょうへい)さんに依頼した。

「当初はアイスランド語の分かる方に意見を聞いてみようという気持ちで朱位さんにメールでご相談したところ、朱位さんから『実はすでに日本語に翻訳して、アイスランド在住の日本とアイスランド双方をルーツとする子どもたちに読み聞かせしています』と返信をいただきました。アイスランドの土地に馴染みがある方に訳してもらおうと考えてましたので『この人しかいない!』と思って翻訳をお願いしました」(前田さん)

日本語翻訳の際に一番悩んだのは、主人公たちを何と訳すか。アイスランド語では「妖怪」や「おばけ」を意味する「Skrímsli(スクリムスリ)」だが、2〜3歳の子どもにも親しみやすいように、いくつかの候補の中から最終的に「かいぶつ」に決定。

これまでに『おおきいかいぶつはなかないぞ!』『まっくらやみのかいぶつ』『かいぶつかぜ』の3冊を翻訳出版した。

多摩市「アイスランドウィーク」との連携も

多摩市では東京2020オリンピック・パラリンピック大会にて、アイスランド選手団の事前キャンプ地となったことなどを契機にアイスランドのホストタウンとして登録された。近年は「アイスランドウィーク」として、アイスランドの文化に触れる様々なイベントを毎年開催している。

「ゆぎ書房」も昨年のアイスランドウィークから参加し、パルテノン多摩でのパネル展示をはじめ、市内幼稚園や「こどもひろばOLIVE」にて、絵本の読み聞かせイベントを開催。昨年12 月には「アイスランド講演会」として、翻訳者の朱位昌併さんとともに前田さんも登壇。多くのアイスランドファンが訪れた。

冒頭に紹介した「ラスカル子ども映画祭」の「多摩市×アイスランド特別プログラム」での絵本をもとにしたアニメーション上映のほか、会場には「おおきいかいぶつ」と「ちいさいかいぶつ」の顔出しパネルが設置された。さらに、聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンターにある「くまざわ書店 桜ヶ丘店」では、「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」のコラボ展示が2024年2月末まで行われた。

2024年秋にはアイスランド伝承にちなんだ「13人のサンタクロース」の絵本の翻訳出版を予定しているそうで、「今後もアイスランドウィークなどで、絵本を通してアイスランドの伝統や文化の一端をご紹介しつつ、みなさんに楽しんでいただけるお手伝いをしていきたい」と意気込みを話していた。

なお、「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」の日本語版の続編については現在検討中としながらも「原書の絵本は10巻まであるので、継続して出版したいと考えています」と話す前田さん。

「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」の日本語版の続編と、多摩市での更なる活躍を楽しみに待ちたい。

店舗名
ゆぎ書房
URL
https://www.yugishobou.com/
前田 君江

ゆぎ書房 代表


丘のまち物語/INTERVIEW ISSUE

多摩で暮らす人たちに軸を据えて、その暮らしぶりや思いなどを語ってもらいます。

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