ケトルドラム
※現在は閉店しています。
聖蹟桜ヶ丘の駅前の聖蹟Uロードから1本入った路地に建つ建物の2階に、37年続く喫茶店がある。今回は「ケトルドラム」の店主、祖母井春子さんとご主人の洋さんにお話しを伺った。
コーヒーが好きでこの仕事がしたかった
店主の春子さんは静岡県浜名湖の近くの出身。上京後は国立市に住み、結婚を機に多摩市に移住した。高校生の頃から家族にコーヒーを淹れるのが好きだったという春子さん。国立市に住んでいる時に紀伊国屋に入ってたコーヒー豆専門店「キャラバンコーヒー」との出会いが運命を決定づけた。
「すごく感動したんです。いつかキャラバンコーヒーの豆で(喫茶店を)やりたいと思いました」
春子さんは、実際にキャラバンコーヒーに入社し、8年ほど勤務。コーヒー豆や店作りのノウハウを学び、府中店の店長を務めるまでにいたった。
転機が訪れたのは昭和58年(1983年)。自分の喫茶店を開くべく独立。店の名前は「ケトルドラム」と名付けた。
はじめは「ケトル(やかん)」にしようかと思ったと話す春子さん。英和辞書を引くと「ケトル」の次にイギリスでは「午後のお茶会」を意味する「ケトルドラム」という言葉があったことから、それを店名にしたという。しかしその後、お客さんから「ケトルドラム」は、打楽器の「ティンパニ」のことも指すと言われたそうだ。
「(お客さんから)『ママさんは音楽が好きだから、そこから名付けたと思った』って、私全然知らなかったのよ」と春子さんは笑顔で話した。
支えてくれるご主人に感謝
「ケトルドラム」は、春子さんが淹れるコーヒーと共に、手づくりのサンドイッチトーストや、スパゲティ、カレーライスが名物の喫茶店だ。
以前はパートを含め、数名で朝9時からモーニングセットなども出していた時期もあったが、7年前に洋さんが病で倒れてからは、春子さんがいつでも対応出来るようにと、午前11時頃から一人で切り盛りしている。洋さんは今は体調が安定し、時々、店で皿洗いなどの手伝いをしている。
今でこそ夫妻で店にいる時間が増えたが、この店を開いた当初はそうもいかなかったそうだ。
「最初は会社を辞めて二人でやろうかと思ってましたが、いろいろ調べると採算が合わず(長く続けるのは)難しいと思いました。それなら私が会社で稼いで、その分を賄おうと思いました」そう話すご主人の洋さんは、定年まで会社務めを続け、資金面で店をサポートした。
「祖母井(洋さん)は、昔からなんでもやらせてくれました。ほんとに感謝です」と春子さんが感謝を伝えると、「一生懸命にやっていると思う。ひとりでやったんだからすごいよ」と、洋さんも春子さんに労いの言葉をかけた。
「今は出来ることだけをやっている。でも、コーヒーを淹れたいという気持ちは昔から変わってない。コーヒーを淹れるのが楽しい」と、店を開いた時から変わらぬコーヒーへの情熱を語る春子さん。そんなにこやかで、元気な春子さんがいる厨房の棚には今でも「キャラバンコーヒー」のコーヒー豆が入った缶が並んでいる。
- 店名
- ケトルドラム