1. このページをSNSで投稿する:
  2. Twitter
  3. Facebook
vol.64

多摩ニュータウン育ちの一級建築士・小野澤裕子さん

落合の団地で育った小野澤裕子さんは、多摩市を中心に多摩ニュータウンで活躍する一級建築士だ。

昨年、長年両親と住むご自宅をバリアフリーにリフォームしたことで、多摩ニュータウンの魅力を再確認したという。

今回は多摩ニュータウン育ちの一級建築士、小野澤裕子さんにお話しを伺った。

建築士を目指したきっかけ

小野澤さんは1977年生まれ。出身は東京都文京区だが、小学校入学時に家族とともに多摩ニュータウンの団地、エステート落合に引っ越して来て38年が経過した。

「私が子供の頃、大手ゼネコンに勤めていた父が手掛けた建物をよく見せに連れていってくれたんです。父は一級建築士なので、建築も建築士も子供の頃から身近に感じていました」(小野澤さん)

その後、小野澤さん一家は戸建て住宅に移り住むことも考えていたそうで、休みになると家族で唐木田や堀之内の内覧会に足を運んだという。

「家を見に行くとお母さんが『この家いいね』とすごく楽しそうにしていたので、家を建てることはこんなに人が喜ぶことなんだなと幼いながらに感じていました。それから、いつか家を作る人になりたいなと思ったんです」(小野澤さん)

小さな頃から絵が得意だった小野澤さんは高校卒業後、予備校を経て「武蔵野美術大学短期大学部」の工芸デザイン専攻木工コースでデザインを学んだ。

「予備校ではグラフィックデザインの先生の授業が面白く、その時に学んだデザインの知識が私の発想の原点です。まっすぐ建築の道へは行かずに少し遠回りをしましたが、浪人時代や大学で学んだことは今の仕事にも活かされています」と当時を振り返る。

短大卒業後に建築系の専門学校を経て、設計事務所で経験を積んだ後、2008年に独立した。「独立を決めた時は二級建築士でしたが、いつかは自分の名前で作品を残したいと思っていたので独立しました」(小野澤さん)

小野澤さんは独立した4年後に一級建築士を取得。多摩センター駅近くに設計事務所を構えて現在に至っている。

自宅をバリアフリーにリフォーム

自宅となるエステート落合の住居のリフォームは小野澤さん自身が設計し、完成したのは昨年11月のこと。両親が高齢になっていくことを考え、段差の無いバリアフリーに全面的に改修したという。

かつて洋室と6畳の和室だった南側の2部屋は1室の広いリビングルームにリフォーム。まるで新築さながらにモダンな住居に生まれ変わった。計画の軸となるバリアフリーには、小野澤さんのこだわりがたくさん詰まっている。

「家中の段差を無くしてフラットにするために床を8cm上げて、ダウンライトを入れるため天井を5cmほど下げました。天井の高さは以前よりも13〜14cmほど低くなりましたが、建具を天井いっぱいの高さにすることで、視覚的効果で低く感じません」(小野澤さん)

北側の寝室には小野澤さんのお母さんが絵を描くためのアトリエを作った。柔らかな自然の光の中で絵が描きやすくなったという。

「北側は結露でカビがすごかったのですが、壁と天井の仕上げに断熱セラミック塗料の「GAINA(ガイナ)」を採用したことで寒さが軽減し結露しなくなりました。以前の家は38年分の物で溢れていましたが、リフォームを機に思い切って断捨離をしたところ、家の中も気持ちもスッキリしました。また曲がっていた廊下を真っ直ぐに整え、窓回りは開放的になるようプランを考えたので、どこの部屋も窓からの景色を楽しむことができ、家族みんなで多摩ニュータウンの自然の豊かさを日々感じています」(小野澤さん)

リフォーム後は西側の窓から見える丹沢の山々を眺めながらキッチン横のダイニングテーブルで食事を取ることが両親のお気に入りだと小野澤さんは話す。

そんな小野澤さんは最近、以前から続けているサッカーの試合中に足を骨折してしまったそうで、段差の無いバリアフリーの良さを図らずも自身が先に体験したという。

「体に不自由がある方だけでなく、小さなお子さんもお年寄りも健常者も、みんなが使いやすいのが本当のバリアフリーだと思っているんです。元気なうちにリフォームをすれば、ちょっとした段差で転んで骨折することもなくなり、介護予防にもつながります。そうした人々の助けになるようなことができればいいですね」(小野澤さん)

小野澤さんが手掛ける住宅はバリアフリーだけでなく、デザインと機能性がどちらも両立していて、きめ細やかな配慮がそこかしこに詰まっていた。

リフォームで多摩市を元気にしたい

小野澤さんは2018年から多摩市ニュータウン再生推進会議の市民委員を務めている。「2040年を目標に多摩市の街をどうしたら良いかを検討する会議で、今年で3期5年目となります。街がこうなったら良いなと思い描くことはあるのですが、それを一市民が会議で発言できる場が用意されているのは素晴らしいと思いました。多摩市に住んでいるいろいろな方から話を聞いて、会議で伝えていきたいと思います」(小野澤さん)

多摩ニュータウンの団地について小野澤さんは「両親は足腰がすごく元気です。多摩市の高齢者は健康な人が多いと言われてるのは坂が多かったり、団地の階段を毎日上り下りしているからだと思っています。先日、豊ヶ丘団地のリフォームを手掛けた際に、現場を見学に来た数名の方から『今は団地の5階に住んでいるけれど、年をとったら同じ団地の3階に住みたいと思っている』と聞きました。団地は大変と思われがちですが、皆さんこの場所を気に入って住み続けているんだなと改めて気付かされました」(小野澤さん)

さらに小野澤さんは、一般社団法人 東京建築士会の福祉まちづくり・バリアフリー特別委員会に所属して、地域の理学療法士らとともに高齢の方が快適に過ごせる家づくりや住宅改修などについて勉強を重ねている。

「建築業界では断熱改修をすることで寿命が4歳伸びると言われています。理学療法士と連携することで今のバリアフリーよりも、もっと進化したバリアフリーができるかもしれないという期待感があります。多摩市を元気にしたいと思っているので、今後は多摩市の団地のリフォームはもちろん、多世代居住を促進するような仕掛けを提案していきたいです」(小野澤さん)

独立した頃は、いつか都心の方で仕事が出来れば良いなと思っていたそうだが、仕事をやり始めると自分が育った街のために建築士としてできることがあるのではないか、と考えが変わったという。

「多摩市内や近隣地域の方々が住まいで困ったことがあった時に、些細なことでも相談してもらえるような存在になりたいですね。とにかく多摩市が好きです」と小野澤さんはにこやかに今後の目標を話した。

多摩ニュータウン育ちの一級建築士がリフォームによって、団地の住み方に新たな風を吹かせようとしている。

店舗名
小野澤裕子建築設計事務所
住所
東京都多摩市鶴牧1-8-4-101
電話番号
042-400-7776
URL
https://onozawa-archi.com/
小野澤裕子

一級建築士


丘のまち物語/INTERVIEW ISSUE

多摩で暮らす人たちに軸を据えて、その暮らしぶりや思いなどを語ってもらいます。

けぇどの会所 <多摩市関戸の風景> NEW

聖蹟桜ヶ丘駅から歩いて10分ほど、行幸橋交差点のすぐそば、旧鎌倉街道沿いに建つ「蔵」のような建物に目を惹かれる。今回は『けぇどの会所』を運営する小林雄一さん・小林更来紗さんご夫婦に話を伺った。
...read more

グランドオープンする多摩中央公園 

多摩中央公園のリニューアル工事がまもなく完了し、2025年4月5日にグランドオープンを迎える。全国でも最大規模のPark-PFI(民間事業者が公園内に設置する施設の収益の一部を改修整備費用に充当する公募設置管理制度)と指定管理者制度を導入し、今後は、3社で構成される指定管理者「TAMAセントラルパークJV」が運営を担う。この「TAMAセントラルパークJV」の丸山晃平さんに、多摩中央公園のリニューアル工事についてお話を伺った。
...read more

リニューアルした「ベネッセスタードーム」 

多摩センターにあるベネッセコーポレーション東京本部オフィスの最上階(21階)に、プラネタリウム「ベネッセスタードーム」が今年2月にリニューアルオープンした。今回はリニューアルに携わった、ベネッセコーポレーション東京本部の柏田 藤子さんにお話を伺った。
...read more

tomoto -子どもと地域のためのカルチャースペース(落合団地)- 

2024年7月に多摩市・落合団地商店街の一角にオープンした、子どもと地域のためのカルチャースペース『tomoto』。今回は『tomoto』を運営するNiEW株式会社の代表 柏井 万作(かしわい まんさく)さんにお話を伺った。
...read more

旧多摩聖蹟記念館(多摩市指定有形文化財) 

多摩市連光寺に所在する都立桜ヶ丘公園内に確かな存在感を放ち建っている「旧多摩聖蹟記念館」。今回は、「旧多摩聖蹟記念館」学芸員の澁谷 朋恵(しぶや ともえ)さんにお話を伺った。
...read more

多摩のローカルヒーロー「バスターフラッシュ」 

多摩市内の福祉施設で働く職員たちが情熱と創意工夫で作り上げたローカルヒーロー「バスターフラッシュ」。 今回はチームバスターフラッシュ代表の萩野元さんと、橋本眞矢さんにお話を伺った。
...read more

珈琲屋 黒子 

貝取北センター商店街の一角にあるスペシャルティコーヒー専門店『珈琲屋黒子』今回は『珈琲屋黒子』の店主 尾籠一誠 (おごもりいっせい)さんにお話を伺った。
...read more

せいせきカワマチ 

多摩市との連携協定に基づき聖蹟桜ヶ丘駅近くの多摩川河川敷(一ノ宮公園よこ)に整備された芝生広場「せいせきカワマチ」を運営管理する「一般社団法人 聖蹟桜ヶ丘エリアマネジメント」事務局の宮原優人さん、山﨑瞭佑さんにお話を伺った。
...read more

「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」と「ゆぎ書房」 

関戸公民館で開催された「ラスカル子ども映画祭(多摩市 ✕ (株)日本アニメーション共催)」では、「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」の『まっくらやみのかいぶつ』アニメーションのスクリーン上映とそれに合わせて読み聞かせが行われ、多くの親子連れで賑わった。今回は「アイスランドのかいぶつ絵本シリーズ」の日本語版を出版する「ゆぎ書房」代表の前田君江さんにお話しを伺った。
...read more

三丁目の家 

玄関の横に「多摩市関戸三丁目の家」と記されたこの長屋では、毎週金曜日になると多くの子どもたちが楽しく遊ぶ声が聞こえてくる。 今回は「三丁目の家」を運営する「くべーる会」代表の松尾 友起さんにお話しを伺った。
...read more

中央図書館× 丸善 開館記念スペシャル対談 

多摩市立中央図書館オープニング記念企画。多摩市立中央図書館の館長・横倉妙子さん、丸善 多摩センター店の店長・中西慶太さんと一緒に新しい中央図書館内を巡ります。
...read more

多摩ニュータウン育ちの一級建築士・小野澤裕子さん 

落合の団地で育った小野澤裕子さんは、多摩市を中心に多摩ニュータウンで活躍する一級建築士だ。 昨年、長年両親と住むご自宅をバリアフリーにリフォームしたことで、多摩ニュータウンの魅力を再確認したという。 今回は多摩ニュータウン育ちの一級建築士、小野澤裕子さんにお話しを伺った
...read more

多摩市在住のパラリンピアン・東京2020パラリンピック 5人制サッカー(ブラインドサッカー)日本代表、黒田 智成選手 

東京2020パラリンピック競技大会が無事閉幕した。多摩市在住の黒田 智成選手が大会期間中3得点をあげ、日本の勝利に大いに貢献したことは記憶に新しい。今回は2002年からブラインドサッカー男子日本代表として活躍する黒田 智成選手にお話しを伺った。
...read more

生まれ変わったケトルドラム 

2020年11月に惜しまれつつ閉店した聖蹟桜ヶ丘の老舗コーヒーハウス「ケトルドラム」が、今年4月30日にリニューアルオープンした。今回は同店の新たな店主、棚沢正義さんと永子さん夫妻にお話しを伺った。
...read more

HUGSY DOUGHNUT(ハグジードーナツ) 

聖蹟桜ヶ丘駅から歩いて約7分、多摩川の近くの路地を進むと一軒の古民家が見えてくる。ここは土日祝日限定で開いているドーナツ専門店「HUGSY DOUGHNUT(ハグジードーナツ)」だ。今回は店主のまつかわひろのりさんにお話しを伺った。
...read more

ZIKICO(ジキコ) 

味を変えないスプーンやフォークなどのカトラリーを作る会社が多摩市にあるのをご存知だろうか。「ジルコニア」という鉱物由来のセラミックに特化したプロダクト「ZIKICO」(ジキコ)を作る株式会社ZIKICOの代表取締役、山瀬光紀さんにお話しを伺った。
...read more

堀内文翔さんとリアルタイムクーポンアプリ 

多摩市には飲食店を支援しようと奮闘する中学生がいる。今回は鶴牧在住の中学生、堀内文翔(ほりうち あやと)さんにお話しを伺った。
...read more

東京都立多摩桜の丘学園とボッチャ 

多摩市聖ヶ丘にある東京都立多摩桜の丘学園では、来年に延期された東京2020パラリンピックの正式競技「ボッチャ」の魅力を発信し、地域の新たな取り組みとして注目されているのをご存知だろうか。今回は同学園の高等部主幹教諭、高橋幹基さんにお話しを聞いた。
...read more

リカーMORISAWA 

多摩市の東寺方に江戸時代末期から続く「森沢商店」その昔、「國見世」という屋号で様々な商品を販売し、戦時中は国からの配給所としての役割もあった同店は、現在「リカーMORISAWA」として、店舗での販売とともにインターネット上で世界中のワインを届ける店の草分け的な存在として、多くのワイン愛好家の支持を得ている。
...read more

ケトルドラム 

聖蹟桜ヶ丘の駅前の聖蹟Uロードから1本入った路地で37年続く喫茶店「ケトルドラム」の店主、祖母井春子さんとご主人の洋さんにお話しを伺った。
...read more

たまロケーションサービス 

多摩市のフィルムコミッション「たまロケーションサービス」代表の柴田 孝司さんと副代表の鳥居 俊平太さんにお話を伺った。
...read more

apricot(アプリコット) 

南野の恵泉女学院大学の正門前にある人気のコッペパン専門店「apricot(アプリコット)」さんにお話しを伺った。
...read more

Kitchen SUNNY HEART 

京王•小田急多摩センター駅から徒歩10分のところにあるkitchenSUNNYHEART
...read more

未知カフェ ~TAMA REVIVAL~ 

多摩市の若者世代による新たなまちづくりの拠点「未知カフェ ~TAMA REVIVAL~」が2月23日にオープンした。
...read more

多摩市発のユニークなオリジナル文房具&雑貨「geodesign(ジオデザイン)」 

ユニークなオリジナル文房具や雑貨を生み出している(株)ジオさんにお話をお伺いした。
...read more

コワーキングCoCoプレイス 

「子どものそばで仕事がしたい」そんな思いを実現できる場所が多摩市にある。
...read more

MUJI × UR団地リノベーションプロジェクト 

団地の新しい住み方「MUJI × UR 団地リノベーションプロジェクト」のご担当者にお話を聞きました。
...read more

ハロウィン in 多摩センター 

多摩センターの秋の風物詩「ハロウィン in 多摩センター2018」が今年も開催される。
...read more

永山フェスティバル 

21回目を迎える「永山フェスティバル」が2018年9月22日(土)と23日(日)の2日間で開催される。
...read more

恵泉女学園大学 

多摩センター駅前からスクールバスで約7分。そこには、自然と静かに対話できる空間が広がっている。
...read more

多摩市若者会議 

多摩市では「多摩市若者会議」を昨年度より開催している。
...read more

桜ヶ丘ゴルフ練習場 

桜ヶ丘カントリークラブの隣にゴルフ練習場があるのをご存知だろうか。
...read more

せいせき桜まつり 

37回目を数える聖蹟桜ヶ丘の春の風物詩「せいせき桜まつり」が去る4月8日に開催された。
...read more

杖道とアート 

400年以上前から続く、杖道(じょうどう)という武道があるのをご存知だろうか。
...read more

TAMA映画フォーラム実行委員会 

「映画祭 TAMA CINEMA FORUM」は今年で27年目を迎えた。
...read more

京王ほっとネットワーク移動販売 

多摩ニュータウンのエリアのお買い物をサポートする移動販売車をご存知だろうか?
...read more

J Smile多摩八角堂 

豊ヶ丘にある「J Smile多摩八角堂」が賑わいを見せている。
...read more

新倉農園 

美味しい苺やブルーベリーの味覚狩りと体験農園が楽しめる新倉農園
...read more

ウルトラランナー井上真悟さん 

多摩市には常に過去の自分を越えようとする世界的なランナーがいる。
...read more

moi bakery 

天然酵母のハード系パンが人気の豊ヶ丘「moi bakery」
...read more

京王多摩センター駅 武田阿沙美さん 

京王多摩センター駅は今年3月からサンリオとのコラボで駅全体が大きく様変わりした。
...read more

ル・ププラン 

「ル・ププラン」では、素材にこだわったフレッシュなケーキを提供している。
...read more

Pizzeria La.Pala 

「ラ・パーラ」では、地場野菜を使った本格的なナポリピッツァやパスタなどが頂ける。
...read more

諏訪2丁目住宅マンション建替事業(Brillia多摩ニュータウン) 

多摩市諏訪2丁目に、「Brillia多摩ニュータウン」は建っている。
...read more

RISTORANTE YAMA 

閑静な住宅街にある「RISTORANTEYAMA」は、特に宣伝もしないまま、人づてにその評判が広がっている。
...read more

日本アニメーション 

昭和50年(1975)に設営された日本アニメーションは、数々のアニメの名作を生み出してきた。
...read more

青木農園 

「採れたての旬の野菜の美味しさ」を味わえる「青木農園」は、多摩市内を流れる大栗川沿いのすぐ近くにある。
...read more

「Art×多摩ニュータウン」 開発さん&水野さん 

ふとしたきっかけから始まるアートと街のつながり
...read more

永どんサポーターズクラブ 加藤さん 

地元永山の魅力を伝えるサイトから登場した「永どん」の生みの親の加藤さんに、その思いをお聞きした。
...read more

ル・ジャルダンブルー 

見た目も美しく、美味しさにも定評のあるケーキを求めて、遥か遠方からお越しになるお客様も多い。
...read more