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vol.64

多摩ニュータウン育ちの一級建築士・小野澤裕子さん

落合の団地で育った小野澤裕子さんは、多摩市を中心に多摩ニュータウンで活躍する一級建築士だ。

昨年、長年両親と住むご自宅をバリアフリーにリフォームしたことで、多摩ニュータウンの魅力を再確認したという。

今回は多摩ニュータウン育ちの一級建築士、小野澤裕子さんにお話しを伺った。

建築士を目指したきっかけ

小野澤さんは1977年生まれ。出身は東京都文京区だが、小学校入学時に家族とともに多摩ニュータウンの団地、エステート落合に引っ越して来て38年が経過した。

「私が子供の頃、大手ゼネコンに勤めていた父が手掛けた建物をよく見せに連れていってくれたんです。父は一級建築士なので、建築も建築士も子供の頃から身近に感じていました」(小野澤さん)

その後、小野澤さん一家は戸建て住宅に移り住むことも考えていたそうで、休みになると家族で唐木田や堀之内の内覧会に足を運んだという。

「家を見に行くとお母さんが『この家いいね』とすごく楽しそうにしていたので、家を建てることはこんなに人が喜ぶことなんだなと幼いながらに感じていました。それから、いつか家を作る人になりたいなと思ったんです」(小野澤さん)

小さな頃から絵が得意だった小野澤さんは高校卒業後、予備校を経て「武蔵野美術大学短期大学部」の工芸デザイン専攻木工コースでデザインを学んだ。

「予備校ではグラフィックデザインの先生の授業が面白く、その時に学んだデザインの知識が私の発想の原点です。まっすぐ建築の道へは行かずに少し遠回りをしましたが、浪人時代や大学で学んだことは今の仕事にも活かされています」と当時を振り返る。

短大卒業後に建築系の専門学校を経て、設計事務所で経験を積んだ後、2008年に独立した。「独立を決めた時は二級建築士でしたが、いつかは自分の名前で作品を残したいと思っていたので独立しました」(小野澤さん)

小野澤さんは独立した4年後に一級建築士を取得。多摩センター駅近くに設計事務所を構えて現在に至っている。

自宅をバリアフリーにリフォーム

自宅となるエステート落合の住居のリフォームは小野澤さん自身が設計し、完成したのは昨年11月のこと。両親が高齢になっていくことを考え、段差の無いバリアフリーに全面的に改修したという。

かつて洋室と6畳の和室だった南側の2部屋は1室の広いリビングルームにリフォーム。まるで新築さながらにモダンな住居に生まれ変わった。計画の軸となるバリアフリーには、小野澤さんのこだわりがたくさん詰まっている。

「家中の段差を無くしてフラットにするために床を8cm上げて、ダウンライトを入れるため天井を5cmほど下げました。天井の高さは以前よりも13〜14cmほど低くなりましたが、建具を天井いっぱいの高さにすることで、視覚的効果で低く感じません」(小野澤さん)

北側の寝室には小野澤さんのお母さんが絵を描くためのアトリエを作った。柔らかな自然の光の中で絵が描きやすくなったという。

「北側は結露でカビがすごかったのですが、壁と天井の仕上げに断熱セラミック塗料の「GAINA(ガイナ)」を採用したことで寒さが軽減し結露しなくなりました。以前の家は38年分の物で溢れていましたが、リフォームを機に思い切って断捨離をしたところ、家の中も気持ちもスッキリしました。また曲がっていた廊下を真っ直ぐに整え、窓回りは開放的になるようプランを考えたので、どこの部屋も窓からの景色を楽しむことができ、家族みんなで多摩ニュータウンの自然の豊かさを日々感じています」(小野澤さん)

リフォーム後は西側の窓から見える丹沢の山々を眺めながらキッチン横のダイニングテーブルで食事を取ることが両親のお気に入りだと小野澤さんは話す。

そんな小野澤さんは最近、以前から続けているサッカーの試合中に足を骨折してしまったそうで、段差の無いバリアフリーの良さを図らずも自身が先に体験したという。

「体に不自由がある方だけでなく、小さなお子さんもお年寄りも健常者も、みんなが使いやすいのが本当のバリアフリーだと思っているんです。元気なうちにリフォームをすれば、ちょっとした段差で転んで骨折することもなくなり、介護予防にもつながります。そうした人々の助けになるようなことができればいいですね」(小野澤さん)

小野澤さんが手掛ける住宅はバリアフリーだけでなく、デザインと機能性がどちらも両立していて、きめ細やかな配慮がそこかしこに詰まっていた。

リフォームで多摩市を元気にしたい

小野澤さんは2018年から多摩市ニュータウン再生推進会議の市民委員を務めている。「2040年を目標に多摩市の街をどうしたら良いかを検討する会議で、今年で3期5年目となります。街がこうなったら良いなと思い描くことはあるのですが、それを一市民が会議で発言できる場が用意されているのは素晴らしいと思いました。多摩市に住んでいるいろいろな方から話を聞いて、会議で伝えていきたいと思います」(小野澤さん)

多摩ニュータウンの団地について小野澤さんは「両親は足腰がすごく元気です。多摩市の高齢者は健康な人が多いと言われてるのは坂が多かったり、団地の階段を毎日上り下りしているからだと思っています。先日、豊ヶ丘団地のリフォームを手掛けた際に、現場を見学に来た数名の方から『今は団地の5階に住んでいるけれど、年をとったら同じ団地の3階に住みたいと思っている』と聞きました。団地は大変と思われがちですが、皆さんこの場所を気に入って住み続けているんだなと改めて気付かされました」(小野澤さん)

さらに小野澤さんは、一般社団法人 東京建築士会の福祉まちづくり・バリアフリー特別委員会に所属して、地域の理学療法士らとともに高齢の方が快適に過ごせる家づくりや住宅改修などについて勉強を重ねている。

「建築業界では断熱改修をすることで寿命が4歳伸びると言われています。理学療法士と連携することで今のバリアフリーよりも、もっと進化したバリアフリーができるかもしれないという期待感があります。多摩市を元気にしたいと思っているので、今後は多摩市の団地のリフォームはもちろん、多世代居住を促進するような仕掛けを提案していきたいです」(小野澤さん)

独立した頃は、いつか都心の方で仕事が出来れば良いなと思っていたそうだが、仕事をやり始めると自分が育った街のために建築士としてできることがあるのではないか、と考えが変わったという。

「多摩市内や近隣地域の方々が住まいで困ったことがあった時に、些細なことでも相談してもらえるような存在になりたいですね。とにかく多摩市が好きです」と小野澤さんはにこやかに今後の目標を話した。

多摩ニュータウン育ちの一級建築士がリフォームによって、団地の住み方に新たな風を吹かせようとしている。

店舗名
小野澤裕子建築設計事務所
住所
東京都多摩市鶴牧1-8-4-101
電話番号
042-400-7776
URL
https://onozawa-archi.com/
小野澤裕子

一級建築士


丘のまち物語/INTERVIEW ISSUE

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