法政大学藤代ゼミが多摩市で出会った「伝えたいこと」
多摩市は、新しいことに挑戦したい人にとってわくわくする出会いがあふれている場所。多摩ニュータウンから発展した多摩市特有のコミュニティにより市民団体が数多く存在し、その活動を通じて地域に貢献している。こうした市民団体に興味を持って、その活動を体験し、取材した学生たちがいる。市民団体紹介冊子「Unknown-大学生による多摩市の市民団体紹介冊子-」を作成した法政大学社会学部 藤代ゼミの3年生 高津こころ(たかつこころ)さん、北守瑠菜(きたもりるな)さん、小林里菜(こばやしりな)さん、二川智羽(にかわちはね)さんにお話を伺った。
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◉法政大学社会学部 藤代裕之ゼミ
町田市にある法政大学多摩キャンパスで、新聞記者やインターネット企業で勤めた藤代裕之(ふじしろひろゆき)教授のもと、さまざまなプロジェクトに挑戦している藤代ゼミ。中でも、ゼミ生がゼミ生を紹介する冊子「変なゼミ」の制作においては、1日何時間ものインタビューによってその人の内面に迫り、”本人さえ気づいてない点”を見つけるまで聞き出すほどの徹底ぶり。今回これまでに多くの取材などを行ってきた藤代ゼミの3年生を中心に14名が、多摩市の市民団体紹介冊子「Unknown」の制作を手掛けた。
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◉「Unknown」制作の軌跡
まず多摩市を知るため、フィールドワークを行い市内を巡った。フィールドワークは、多摩市の歴史を知る気づきがあったり、市民団体の活動パンフレットを発見したりと有意義な時間となった。その中で、市民団体の存在を知り”大学生から見たら何だか分からないこの団体をもっと深く知りたい!”と思い取材のテーマに決めた。取材を進める上では、活動内容だけでなく、団体名も取材対象を選ぶ上で重要な材料になった。
「「男の会」って何!?と思い、インパクトのある団体名に惹かれて、取材しようと決めました。」そう語るのは、ヴィータ男の会を取材した編集長の高津さん。団体名のインパクトに惹かれたことから始まり、どんな活動をしているのか調べていく内にさらに興味を持ち、取材するに至った。
こうして学生自らが取材する市民団体を、一本杉炭やき倶楽部、歴史古街道団、ヴィータ男の会、多摩めかいの会、多摩リバティーアカデミー、多摩杖道会の6団体に決めた。市民団体への取材は担当制ではなく行ける人が行くスタイルで、学生一人でいくつかの市民団体を掛け持ちした。取材までのプロセスは、事前に下調べをして、それぞれの市民団体に自ら連絡を取り、自分たちが実際に活動に参加して取材を行うのだが、スムーズにいかない部分もあった。
「実際に活動に参加してみて、最初は”身内感の強い団体”という印象。打ち解けるのに勇気が必要だった」と北守さん。半年ほど経過して、だんだんと頼ってもらえるようになったという。打ち解けた今では、ヴィータ男の会の活動200回を記念して作成した冊子の表紙もデザインを任されるほどに。「取材を終えた今も、参加してほしいと案内の連絡をいただいています」と北守さん。勇気ある一歩を踏み出して、輪の中に飛び込んだからこそ、取材期間を経て、信頼関係を築くことができたようだ。
また、小林さんも一歩踏み出すことの重要性を話す。「インターネットで情報が手に入りやすい世の中。実際に活動場所に行くことでしか分からないことがある。一本杉炭やき倶楽部の活動に参加した時の、炭焼きのにおいであったり空気感は、その場に行くことでしか得られない経験がだった。実際に市民団体の活動をともに行うことが大事だと思った。」と小林さん。
二川さんは、多摩リバティアカデミーへの取材を経て、「私自身の恋の悩みも打ち明けられるくらい、実家のような安心感のある方々だった。」と語る。「恋活しませんか?」と書かれた多摩リバティアカデミーのチラシを見て、活動内容に興味を惹かれ取材を始めたものの、はじめは年の離れた団体の方との会話やインタビューに苦戦した。何度も繰り返し会う中で、知ろうとすればするほど、親切で優しい方々であることが分かり、安心して恋の悩みも打ち明けられるほどの関係性を築くことができたという。
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◉「身近な未知に飛び込め 世界はもっとおもしろくなる」
「Unknown」の裏面にはサブタイトルとして「身近な未知に飛び込め 世界はもっとおもしろくなる」と記されている。”まだ知らないだけで、楽しいこと・面白いことは思っているよりもすぐ近くにある。その一歩を踏み出すだけで、まったく違う世界に飛び込むことができる。”と強いメッセージが込められている。まさに、その”知らない”に自ら飛び込み、楽しさを体験した藤代ゼミの学生ならではのメッセージである。この活動で得られた経験を話してくれる藤代ゼミの学生たちの姿は、”逞しく”感じた。
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◉それぞれの思いをもって、制作された「Unknown」。
多摩市には、市民団体が数多く存在している一方で、新たにこのまちで暮らし始めた人にとっては、そうした団体と出会うには”きっかけ”が必要だ。藤代ゼミの学生たちは、フィールドワークでこの”きっかけ”を離さなかったからこそ、多摩市を舞台にそれぞれの”やりたい”を叶えている市民団体の方々との出会いがあった。この出会いから「大学生」と「市民団体」という、少し意外で新鮮な掛け算が生まれた。そしてその背景には、藤代ゼミの「伝えたい」という真っすぐな想いがある。
「制作を通して、一歩踏み出すことの大事さを知った今、この冊子を作る前の自分に読んでもらいたい」と語る高津さん。
北守さんは、「新しく多摩市に住み始めた人に、市民団体の存在を知ってもらいたい。この冊子を通して、“未知(=Unknown)”を“既知”に変えてほしい」と話す。
小林さんは、「もちろん多摩市の人にも読んでもらいたい。けれど、できれば多摩市以外の地域にも届いて、同じような市民団体の活動が広がってほしい」と想いを「Unknown」に託した。
そして二川さんは、「大学生である私たちが直接見て、話を聞いたからこその視点が「Unknown」にはある。だからこそ、同じ大学生に読んでもらいたい」と語る。
この”きっかけ”はたまたま藤代ゼミの学生の前に現れたわけではなく、一歩踏み出せば誰でも得られるのだ。このことを藤代ゼミの学生たちが身をもって証明した。
今回取材した4人だけでなく、携わった藤代ゼミ14名それぞれの想いが詰まった『Unknown』。
「大学生」と「市民団体」という掛け算の答えは、この『Unknown』の中にある。

高津 こころさん【編集長】
北守 瑠菜さん【副編集長】
小林 里菜さん
二川 智羽さん










































