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vol.57

リカーMORISAWA

多摩市の東寺方に江戸時代末期から続く「森沢商店」がある。明治5年(1872年)には、すでに納税していたという記録が残っているほど、多摩市内でも最古参の商店のひとつだ。

その昔、「國見世」という屋号で様々な商品を販売し、戦時中は国からの配給所としての役割もあった同店は、現在「リカーMORISAWA」として、店舗での販売とともにインターネット上で世界中のワインを届ける店の草分け的な存在として、多くのワイン愛好家の支持を得ている。

今回は「リカーMORISAWA」代表の森澤 國和さんと奥様の晴美さん、息子さんの久仁平さんにお話を聞いた。

江戸末期から続く「村の百貨店」

森沢商店の始まりは、今から150年以上前の江戸末期まで遡る。

「詳細な記録は残っていないのですが、江戸の後期からはすでにこの地で「森沢」という商店があったそうです。その商店を譲り受け、商いを拡げていったのが初代の「國平」でした」と語るのは5代目主人の國和さん。

かつて「南多摩郡多摩村」という地名だった当時の店はいわば「村の百貨店」。薬や新聞をはじめ、絹の白生地、棺桶など様々な商品を販売していて、その中でお酒の量り売りもしていたという。

店の転機となったのは平成元年(1989年)。店の建て替えの際に、國和さんと晴美さんが以前から興味をもっていた「ワイン」のコーナーを作ったのがはじまりだ。

「ひっきりなしにお客さんが来て、あの日は今でも忘れられません」と当時を振り返る晴美さん。新装オープンの際は2日間で1,000人以上が来店し、大きく賑わったそうだ。

人生を変えた「ワイン会」

その後、ワインをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えて始まったのが「ワイン会」だ。地域の自治会館を会場に毎月1回、料理やパンとチーズとともにワインを持ち込んで、ワインだけの飲み会を開いた。

「フランスからはじめて、温度管理されたコンテナで輸入されたワインを飲んだ時は目からウロコが落ちるほど感動しました。ワイン好きの仲間といると、いろいろなワインが試せるし、情報交換ができる。それが今につながっています」と話す國和さん。

13年間続いたというその「ワイン会」の参加者の中には、今も同店で働いているスタッフの方や、ワイン好きが高じて、山梨県甲州市のワイナリーで醸造家として活躍している方もいる。

その方が作る、軽やかで華やかな風味が特徴的なワイン「BOW!」は、「リカーMORISAWA」のネットショップで販売されると、1分もしないうちに売り切れる大人気商品となっている。

自然派「BIOワイン」との出会いとネットショップでの販売

今でこそ、常時500〜600種類ほどのワインを販売している同店だが、1990年代のバブル崩壊後はコンビニやスーパー、ディスカウントショップが増え、次第に売上が減っていったという。

そんな中、以前から付き合いのあった輸入業者からの紹介で「無農薬」で「酸化防止剤」を入れない「ナチュール(自然派)」のワインと出会う。それが同店で多く取り扱う「BIO(ビオ)ワイン」との出会いだった。

「最初にBIOワインを美味しいと思った時に、岡山県の実家で夕暮れ時の稲刈りをした時の田んぼの香りを感じたんです。『これがナチュールなんだ!』と感動しました」と話す晴美さん。

しかし、販売からしばらくは売上が伸びない日々が続いたそうだ。苦境の中、業界新聞でインターネット上でワインが販売され、多くの売り上げがあるとの記事に衝撃を受けたという。

それが日本のショッピングサイト大手「楽天市場」との出会いだった。21年前(1999年)当時は、インターネットが一般家庭に普及しはじめたばかりの頃だったが、すぐに出店を決意。「楽天市場」のワインの部門では7番目の出店となったそうだ。

なんとしても「BIOワイン」を世の中に広めたい。そんな想いから店のスタッフと一緒に考え「無理強いワイン」というキャッチフレーズをつけたところ一気にブレイク。次第に「BIOワイン」の認知度も上がっていった。

「ここ20年でワインはヨーロッパだけでなく、様々な国で作られるようになり、世界的な需要も高まってきました。ただ、生産量を増やせば品質は落ちてしまいます。「BIOワイン」は1970年代以前に主流だった、農薬を使わないもともとの作り方。その原風景を求めて、より良いものをお届けしたいですね」と話す國和さんと晴美さん。

5年前からはフランスのワイン畑や醸造所で武者修行した息子の久仁平さんが帰国し、将来を見据えて店の業務を行っていることから、新たな美味しいワインを求めて、試飲会に参加する機会も増えてきているそうだ。

東寺方で古くから親しまれた「村の百貨店」は、時代が移りゆく中で形を変えながらも、昔ながらの古き良きワインを多くの人々に届けている。

店舗名
リカーMORISAWA
住所
東京都多摩市東寺方563
営業時間
9:00~19:00
定休日
日曜日
電話番号
042-374-3880
URL
https://www.rakuten.ne.jp/gold/morisawa/
森澤 國和

有限会社森沢商店 代表

森澤 晴美

森澤 久仁平


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