J Smile多摩八角堂
豊ヶ丘にある「J Smile多摩八角堂」が賑わいを見せている。
もともとは日本総合住生活株式会社のリフォームのショールームだったという「J Smile多摩八角堂」は平成11年に建てられた建物。外観はその名の通り八角形と特徴的でとても目立つ。昨年からここを拠点に地域コミュニティ活性化に向けた取り組みが始まっているのをご存知だろうか。
今回はその取り組みについて日本総合住生活株式会社・営業企画部の石津正彦さん、平井康裕さん、鋤柄さやかさん、首都大学東京・都市環境学部建築都市コース饗庭研究室リサーチアシスタントの山崎健太郎さん、国重安沙さんにお話を伺った。
首都大学東京の講義がきっかけで得られた体験
UR都市再生機構のグループ会社である日本総合住生活株式会社(以下:JS)は全国で展開するUR賃貸住宅をはじめとした、集合住宅の管理などを行う会社だ。分譲住宅は全国で約16万戸の取り扱いがあり、その中でも多摩ニュータウンは多くの比率を占めている。
豊ヶ丘南公園にほど近いJ Smile多摩八角堂(以下:JS八角堂)は近年まで、同社の多摩営業所や倉庫として使用されていたが、最近では遊休施設として使用されていなかった。事業開発課長の石津さんは、このJS八角堂を街の活性化に活用できないかと模索していたところ、同じ部署の担当者が首都大学東京(以下:首都大)の饗庭伸准教授とのつながりがあり、まずは首都大の講義でJS八角堂を利用することになったという。
具体的には、多摩ニュータウンの中を歩いて、その魅力を自分たちで見つけ出しデザインする「参加型デザイン実習」をJS八角堂やこの周りの公園を使って実施し、終わった後は携わった学生のバンド演奏やマジックショーなど、学園祭のようなイベントを行った。すると周辺住民の皆さんが多く立ち寄り、かなりの盛り上がりを見せた。
「もともとこの辺りは首都大の学生さんも多く住んでいました。この建物に学生さんが出入りしていると『何をやっているのかな?』と周りから自然に人が集まって喜んでいただけたという体験を得られたきっかけがこのイベントでした。」とJSの石津さんは当時を語った。そこで集まった方に、この建物がイベントなど、多目的な利用が出来ることをチラシで告知したところ、イベント参加者などから口コミで拡がり、多くの反響があった。
「街を活用する」取り組み「多摩ニュータウン南側プロジェクト」
一方で公民館のような集会所としての役割ではなく、地域を盛り上げる街づくりのために人が集まれる場を目指したいという思いがあったという。
「首都大の饗庭先生は『この地域はもっと良くなるのにオールドタウンと呼ばれてもったいない。』という思いがありました。その中で『街を活用する』という取り組みや、この街の魅力が向上するような拠点にしたいというビジョンが出てきました。」と語るのはJSの鋤柄さん。
昨年9月にはJS八角堂の1階に焼きたてパンを販売する「moi bakery」がオープンし、次第に人が集まり始めていたこの時期、首都大の饗庭研究室のスタッフと多摩市役所、京王電鉄、多摩信用金庫、ヤマト運輸、UR都市再生機構、JSといった地域に関わる自治体・企業が多摩ニュータウンの魅力を再発見して発信する「多摩ニュータウン南側プロジェクト」を立ち上げた。
このプロジェクトでは多摩ニュータウンの南側エリア(諏訪、永山、貝取、豊ヶ丘、落合、鶴牧それぞれの住区の南側)を「多摩ニュータウン南側」と名付け、参加団体がアイデアを出し合い、それぞれの取り組みの共有や、地域向上のための市民向けワークショップなどをJS八角堂を拠点に開催している。ワークショップで出された意見やアイデアは参加団体にフィードバックされ、次のまちづくりに活かされていく。
首都大の山崎さんは「私たちが木曜と金曜に常駐しています。地域の事で何か考えていることがあったらここに来て話すというような地域の相談所として少しずつ認知されているかと思います。この地域を活性化するためには、イベントだけやっていてもダメだし、JS八角堂だけ盛り上がればいいというわけではありません。多摩ニュータウンに今後訪れるであろう、空き家問題なども考えようと、アンケート調査を行なっています。そこから空き家の有効利用などで動いていきたいです。」と今後の展望について語った。
街の魅力を再発見して発信する拠点に
3月中旬には市民ワークショップで出されたアイデアを基に「八角堂マルシェ with たまら・び」が開催され、こちらも多くの方が訪れ賑わいをみせた。石津さんは「もともとポテンシャルが高い地域なので、半年間でここまで来たのは本当に周りにお住いの皆様のおかげ。もっと自然に人が集まって、JS八角堂が多くの方に認知されるようにしたい。」と語った。
鋤柄さんは「今後は運営体制を整えつつ、moi bakeryさんのように地元の方の起業や、自分たちで暮らしを良くする活動を一緒にやっていけるような方と組めたらいいなと思っています。近隣の方だけじゃなく、市外の方にも気軽に入っていただけて、使っていただけるような雰囲気をつくっていきたいです。」と今後の八角堂のあり方についても語ってくれた。
古くから日本では「八」という数字が”末広がり”として縁起のいい数字とされてきた。長い間、遊休施設として活用されていなかったJS八角堂は首都大の学生や周辺の住民が集うことで地域の新たなランドマークとしての第一歩を歩み始めた。
今後、多摩ニュータウンの新たな魅力を発信する拠点として、大きな拡がりを見せるだろう。
- 施設名
- JSmile多摩八角堂
- 所在地
- 〒206-0031 東京都多摩市豊ヶ丘5-5
- お問合わせ(首都大学東京 多摩ニュータウン南側実験室)
- 042-337-1386 (木・金のみ、10時〜16時)
- メール
- tamaminamigawa@gmail.com
- お問合わせ(日本総合住生活株式会社)
- 03-3518-9162
- メール
- js10830@js-net.co.jp
- URL(多摩ニュータウン南側プロジェクト)
- https://tamaminamigawa.tumblr.com/