ウルトラランナー井上真悟さん
多摩市には常に過去の自分を越えようとする世界的なランナーがいる。
現在多摩市を拠点にランニングスクールの講師を務める井上真悟さんは、100km以上を走破する「ウルトラマラソン」の日本での第一人者だ。
今回はウルトラランナーの井上真悟さんにお話を聞いた。
2010年には世界選手権で優勝
井上真悟さんは八王子市出身で1980年生まれの36歳。都立松が谷高等学校陸上部で800mと長距離駅伝に打ち込むものの、誤ったトレーニングの影響で椎間板ヘルニアを悪化させ競技を断念。その後、23歳の時に初めて地方のフルマラソンに出場したのをきっかけに、100km以上を走るウルトラマラソンという競技を知り、翌年、ホテルマンとして働きながらもギリシャスパルタスロン大会(246km)に初出場し9位を獲得。
2006年と2007年にはサハラ砂漠マラソン(230km)に出場し、2年連続で日本人1位を、2010年にはフランスで開催された世界選手権で伝説のウルトラランナーと呼ばれるスコット・ジュレクを破り、24時間走史上最年少記録となる29歳で世界タイトルを獲得した。以降も様々な大会で好成績を残し、2016年は台湾一周246kmランアクロス台湾で優勝、24時間走競技アジア選手権で総合優勝を果たしている。
目的をしっかりと考えることが大切
そんな井上さんは、4年前から多摩地区で「コアランニングスクール」というランニングスクールをスタートさせ、市民ランナーにランニングの楽しさを伝えている。「走る目的に対して、どう努力して何をしたのかということが重要。自分の健康管理や目的のための計画づくりといったセルフマネジメント、セルフコーチングの方法を伝えていきたい。」とランニングのテクニックだけでなく、個人の走る目的をしっかりと考えてもらうことを重点に置いて教えている。
スクールの参加者の目的は自己ベストの更新、ストレス発散、健康の増進とそれぞれ違う。「その人が走る目的を知らずに声援だけしても、それは本当の応援ではありません。何のために走っているのか。ちゃんと関心を持ってあげることが重要なんです。」とスクールでは応援の本質についても厳しく伝えているという。
マラソンは人生の練習問題
井上さんは決して一筋縄ではいかない波瀾万丈の人生を辿ってきた。愛する人との別れ、父親の死。大きな試練や逆境をウルトラマラソンに挑戦することではねのけてきた。
井上さんは日本全国の児童養護施設に出向いては子供達に自らの体験を直接伝える講演活動をしている。「子供達に話したら目をキラキラさせて喜んでくれた。涙が出るほど嬉しかった。」という井上さんは昨年、自身の半生を綴った自伝を台湾で出版した。
マラソンと人生はよく似ていると話す井上さん。「人生はマラソンと一緒で、今この仕事をしている目的がなんなのかブレてしまうと周りに流されて時間が経ってしまいます。何が大切なのか目的から逆算して、そのために何をするべきか見えていれば、結果的に目標や夢が叶うにしても叶わないにしても、その過程で自分の人生を頑張れると思うんです。もちろん、マラソンよりも人生の方が大きいわけでマラソンは人生の練習問題になると思うんです。」失敗を恐れず前に突き進む井上さんの瞳は常に遥か先を見据えている。
2020年にアメリカ大陸横断駅伝を実現させたい
今年1月にはイギリスで開催される雪上ウルトラマラソン「SPINE RACE」に自費で挑戦しながら、クラウドファンディングで講演活動費を募り、全国の児童養護施設や台湾、中国の孤児院を走って訪れて、マラソン体験や挑戦の大切さを子供達に伝える講演活動を行う予定である。
最後に「2020年にアメリカ大陸横断駅伝を実現させたい。」と大きな目標を語ったウルトラランナー井上真悟さん。目標をしっかり定める井上さんの挑戦は必ずや実現することだろう。
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