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「知って・愛して・多摩市 」Vol.4「アニメを紡ぐ『たまてばこ』」

 一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

 4回目の今回は、多くの有名クリエーターを輩出している名門アニメ制作会社で多摩市内にスタジオを構える、日本アニメーション株式会社代表取締役社長の石川 和子さんから見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

 そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

「アニメを紡ぐ『たまてばこ』」

日本アニメーション株式会社 代表取締役社長 石川 和子

 

 私にとって「多摩スタジオ」は紛れもない魔法の「たまてばこ」でした。手のひらの文庫本の中にいた「アン・シャーリー」が、テレビ画面の中であたかも実在の人物のように描かれ成長していく様を楽しみに、本当にワクワクしながら一週間を待ちわびました。皆さんもご存知だと思いますが、TVアニメ「赤毛のアン」です。たった100グラムの小さな文庫本の黒い明朝体の文章から、あんなにもカラフルで美しい自然や風景と、生き生きとした表情の主人公たちを創り出し、いつも心を揺さぶり時に涙を誘う映像を紡ぎ出していたのです。本当に素晴らしい「玉手箱」で、私だけでなく後の娘や孫娘をも虜にしました。アニメには人を魅了し感動させる素敵な力があると私は信じています。そのアニメを制作する「多摩スタジオ」が多摩市和田にあるのです。
 
 弊社は1975年に私の父の本橋浩一が創業したアニメ制作会社です。和田にある社屋は正式には本社スタジオと言いますが、通称「多摩スタジオ」です。元々は日活の撮影スタジオでしたが、そこでアニメ制作を始めました。「フランダースの犬」「あらいぐまラスカル」「赤毛のアン」などの「世界名作劇場」シリーズが代表作で、毎週日曜夜7時からフジテレビで23年間続けて放送されてきました。アニメの代表的なジャンルとして、ファンタジー、ロボット、スポーツ、恋愛等々ありますが、弊社が得意とするのは、児童文学を原作にした日常芝居のファミリー向け作品です。
 
 今も毎週日曜夕方6時からフジテレビで放送されている「ちびまる子ちゃん」も少女漫画原作ですが、子供も大人も家族が一緒に食卓を囲んで楽しめるファミリー作品です。1990年の初回放送から29年目を迎える長寿番組です。
 
 世界名作劇場の初期の作品などは、高畑勲氏や宮崎駿氏が監督や作画を手掛け、聖蹟桜ヶ丘が舞台と言われている「耳をすませば」の監督の近藤喜文氏や、一昨年大ヒットした「この世界の片隅に」の監督の片渕須直氏も多摩スタジオに在籍していました。今のアニメ界を支えてきた大御所アニメーターを数多く輩出してきた多摩スタジオ。彼らの成長にここ多摩市の環境は大きな影響を与えていると思います。
 
 最寄りの駅は京王聖蹟桜ヶ丘駅で、新宿方面から来れば多摩川を渡ってすぐです。駅からスタジオまで歩けば約20分。駅前のビルを抜け大栗川を渡り、坂道を登って住宅や畑の小道を抜けて着きます。地形的にも起伏が激しく坂道が多い分、丘の上から見える風景は、多摩川越しの府中方面の平野群、八王子方面の高尾山と、素晴らしい眺めです。いろは坂など本当の日光の山のようです。そして、その中に金比羅宮や小野神社など歴史や日本を感じさせるスポットがありながら、駅近くにはおしゃれな今時のレストランから昔ながらの商店まで共存しています。とても多面性をもった日本の特徴を凝縮したような、歩いて楽しい街です。
 
昭和の時代、スタジオのアニメーターも駅近くの喫茶店でくつろいだり、自然豊かなエリアを散歩したり、煮詰まった頭をリフレッシュするにはとても良い環境だったと聞いています。おそらく彼らの後の作品には聖蹟桜ヶ丘の何処かしらがモチーフに使われているのではないでしょうか。現在のスタッフもみんなここを気に入っています。
 
 弊社の創業理念には「世界中の子供たちに夢と感動を与え、人間性の涵養に寄与したい」とあり、創業40周年を機に、この多摩市の子供たちにも何か貢献していきたいと思い「ラスカルこども映画祭」を多摩市との共催で始めました。まずはアニメや映画を観て欲しい。小さい時からお父さんやお母さんと一緒に、大きなスクリーンで感動を体験して欲しい。ちょっと泣いたり騒いじゃっても大丈夫な映画館デビューの機会を作りました。弊社のアニメだけでなく世界中から良質な作品を集めています。上映だけでなく生アテレコや楽器の生演奏、ダンス、お絵かき、かき氷やさんと楽しい夏のお祭りイベントになっています。多摩市の商店会やカフェ、お菓子屋さんともコラボし皆さんに盛り上げてもらっています。
 
 聖蹟桜ヶ丘では、せいせき桜まつり、朝顔市、KAOFES、せいせきみらいフェスティバルなど沢山のお祭りがあり、ラスカルも参加させて頂いています。そこで感じる市役所をはじめ、商店会、各お祭りの実行委員会の方々の多摩市への愛情の大きさに圧倒されています。こういう人たちが裏で支えているからこそ、寛げる街であるのだと感じます。微力ながらこれからもお役に立てればと思います。
 
 これからも「多摩スタジオ」という「玉手箱」から、みなさんをワクワクさせるアニメ作品を産み出して参りますのでご期待下さいませ。


日本アニメーション株式会社
代表取締役社長 石川 和子