映画『耳をすませば』公開30周年記念上映会&トークショーを開催しました
聖蹟桜ヶ丘駅近くの関戸公民館ヴィータホールにて、映画『耳をすませば』公開30周年を記念した上映会とトークショーを2025年8月10日(日)に開催しました。

開会にあたり、阿部裕行多摩市長が登壇。「北海道から沖縄まで全国各地から多数の応募があり、応募総数は7,000人を超えました」と報告しました。
阿部市長はかつて、メディアの仕事をしていた頃の1997年に同作を監督したスタジオジブリの近藤喜文さんと仕事をした経験を紹介。「当時、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーから“これからのジブリを担っていく人物”として紹介されました。その翌年に近藤監督が亡くなられた時は本当にショックでした」と振り返りました。最後に「温かい作品世界は、まさに近藤監督が作り上げたもの。今日は皆さんと映画を鑑賞し、本名陽子さんをはじめ多くの皆さんと語らいながら、30周年を一緒にお祝いしましょう」と挨拶しました。
聖ヶ丘中学校の皆さんによる名場面の再現

『耳をすませば』はスタジオジブリによると「大いに参考にした場所」として聖蹟桜ヶ丘エリアを描いており、本編には聖蹟桜ヶ丘の風景が数多く登場します。
映画の上映後には、市内の聖ヶ丘中学校の生徒による劇中の名場面の再現が行われました。また、総合司会も聖ヶ丘中学校の三浦摩利指導教諭が担当しました。
保健室でのガールズトークや、杉村が雫に告白する神社前でのシーン、雫と聖司が自転車で走る場面などが披露され、会場は温かな雰囲気に包まれました。

さらに映画の主題歌となった「カントリー・ロード」をアカペラで合唱し、コーナーの最後には会場全員で「聖蹟、大好きだ〜!」とコールすると、会場から大きな拍手が沸き起こりました。
月島雫 役の本名陽子さん

続いてトークショーでは、『耳をすませば』の主人公・月島雫 役の本名陽子さんが登場。
「スクリーンで観られるのは最高ですよね。30年経って、こうして皆さんと作品を一緒に振り返られることが本当に幸せです」と笑顔で挨拶しました。

ゲスト1人目として登場したのは野球部・杉村役の中島義実さん。
映画さながらに本名さんが雫の声で呼びかけると、中島さんも杉村の元気な声で返答しながら登場し、会場を大いに沸かせました。

中島さんは、地元・埼玉県狭山市のイベントで和太鼓を演奏した際、楽屋の名札に「本名陽子」と書かれているのを見つけて驚いたエピソードを披露。その3日前にSNSで「今度会おうね」とやり取りしていたばかりで、劇的な再会を果たしたそうです。
映画収録当時、生徒役の多くは中高生でしたが、中島さんは20歳で参加。「みんなのお兄ちゃん的な存在で張り切っていました」と振り返りました。
本名さんは、雫と聖司(当時中学生の高橋一生さん)のシーンを収録する際に二人がなかなか距離を縮められず、別日に再収録になったエピソードを紹介。そのとき、アルバイト中だった中島さんが、スタジオジブリの鈴木敏夫さんと近藤喜文監督に急きょ呼ばれ、緊張していた本名さんと高橋さんを和ませたといいます。スタジオに入り、シーンを真似して笑いを誘い、雰囲気を和らげたのだそうです。
本名さんは「一日の収録の中で、二人の関係性が急速に変化していくため、ラストシーンは特に悩みましたが、中島さんが二人をつないでくれました。この作品は役者やスタッフ一人ひとりの力で作られていたと実感しています。あのときの中島さんは、みんなをつなぐ存在でした」と当時を振り返りました。

エピソードトークに続いては、劇中でも印象的な杉村から雫への告白シーンを、本名さんと中島さんが30年ぶりに再現。
音響のスタッフさんがこの日のために収録したというセミの声をBGMに30年前と変わらぬお二人の掛け合いに、会場の皆さんも一瞬で映画の世界に引き込まれました。

続いて、本名さんが主題歌「カントリー・ロード」のカップリング曲として収録された「半分だけの窓」を、ピアニストの佐藤めぐみさんの伴奏で初披露。
澄んだ歌声と旋律が会場を包み込みました。

ゲスト2人目として、天沢聖司役のヴァイオリン演奏モデルを務めたKaoさんが登場。
「もう30年も経ったのかという感じです。最初はこんなに大きな仕事になるとは思っていませんでした。スタッフさんから『後々すごいことになるかもよ』と言われても実感がなくて…。こんなに長く愛していただける曲を演奏できるとは思いませんでした」と挨拶しました。
ヴァイオリンのシーンは、Kaoさんの演奏映像をもとに長時間かけて作画されたそうです。「録音する場に行ってみたら、(ヴァイオリン)を弾くときの細かい振りや、指の動かし方、弓の持ち方を詳しく描きたいので、記録用にビデオを撮っていいですか?みたいな話になりまして。それがまさかこういう聖司くんになって、私が弾いた形が残るなんて、その時は全然考えもしなかったです」と振り返りました。
この日はまず、本編の音楽を担当した野見祐二さん(この日は動画で出演)が作曲した「耳をすませば イメージアルバム」から「ヴァイオリンをつくる少年」を披露しました。

さらに、聖司が「カントリー・ロード」を弾く前に試し弾きするシーンは、同作でプロデューサーを務めた宮﨑駿監督のアイデアだったことも紹介。「宮﨑さんがバッハの『無伴奏ヴァイオリン』の冒頭部分を『この曲を弾けますか』とミニスコアを持参し、演奏した場面が作品に反映されたんです」とエピソードを明かしました。

イベントの最後には、Kaoさんが「カントリー・ロード」のヴァイオリンアレンジを披露し、本名さんの歌声との共演で会場全体がひとつになり、盛会のうちにイベントは幕を閉じました。
本名さんは、「(イベントを)開催できたのは、ここにいらっしゃる皆さんや、せいせき観光まちづくり会議の方々をはじめ、多くの方々のおかげです。本当に感謝でいっぱいです。この思いが近藤喜文監督(1998年に逝去)にも届いているのではないかと思います。『耳をすませば』はジブリ作品の中でも特別な存在で、本当に素敵な作品です」と話し、トークイベントを締めくくりました。
会場となった関戸公民館の7階ギャラリーでは、「イバラードの世界『耳をすませば』井上直久展」が8月11日まで開催され、多くの来場者が『耳をすませば』の作品世界を楽しみました。
本名さんが2005年から出演し、今年20回目を迎えた「せいせきハートフルコンサート」は、来年も開催が予定されています。
© 1995 Aoi Hiiragi, Shueisha/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NH

