「知って・愛して・多摩市 」Vol.5 整った都市インフラが多摩市の魅力

 一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

 5回目の今回は、様々な地域の観光事業・地域活性化事業に関わっていらっしゃる、帝京大学経済学部観光経営学科教授 大下 茂先生から見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

 そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

整った都市インフラが多摩市の魅力~「地」と「図」から多摩市の観光都市像を描く~

帝京大学経済学部観光経営学科教授 大下 茂

 

■ 多摩は知っていても、多摩市は知られていない
 多摩川、多摩ニュータウン、天気予報での多摩地域、多摩ナンバー等、「多摩」の知名度は高い。「都心(区部)」に対する「多摩」として、知名度は拮抗している。しかし、多摩市はというと、多摩地域の中心ではないかという推測はもてるものの、正直、“これっ”といった先行する地域イメージはないのではないだろうか。キティに代表される「サンリオピューロランド」は多摩センターにあるのは知っていても、多摩市にあることを知らないで訪れている観光客も少なくない。
 先行イメージがないことは、集客・観光においては不利な条件となる。しかし先行イメージが強すぎると、新しいことに取組むには“意識の壁”となることも多いのが現実である。イメージを壊すということで、新規イメージへの方向転換に際しての抵抗は少なくなく、気がついた時には、知名度の低下はおろか、地域の活力が冷え切ってしまっていることにもなりかねない。
それから思うと、「多摩」の知名度を借りて、多摩市の地域イメージをこれから創りあげていくことは、不利というよりも逆に、建設的・創造的な知的作業といえよう。
■ 都市地域の集客・観光はすべてがライバル
 このことは、多摩市だけではない。池袋は知っていても「豊島区」は知らない。王子・赤羽・田端は知っていても「北区」にはつながっていない。蒲田・大森・羽田は有名でも「大田区」は出てこない。都市部での集客・観光を進めるポイントは、知名度の低い自治体名の知名度向上に力を入れるよりも、知名度のある集客スポットに光を当てて、それをつないで、自治体そのものの知名度向上につなげることが近道である。
多摩市には、「聖蹟桜ヶ丘」と「多摩センター」という2つの知名度のある集客核があり、広く認知されている。商業機能集積という共通性に加えて、「聖蹟桜ヶ丘」は近年ではジブリ映画のモデル地と噂されたことによる集客、そして「多摩センター」はもちろん「サンリオピューロランド」の集客により、地域外からの来訪も多い。
 この2核を前面に押し出して集客・観光イメージを高め、2核をつなぐことで周辺地域の魅力化を図り地域回遊へとつなげていく戦略である。そしてそれを可能にするものが都市観光特有の公共交通機関の存在である。
■ 公共交通機関が整っている多摩市
 「聖蹟桜ヶ丘」と「多摩センター」は、訪日外国人観光客に人気の新宿や高尾山ともつながっている。また、相模原・横浜方面や小田急沿線、多摩都市モノレールによって中央本線等の広域とネットワークできる好位置にある。さらに両核は、多摩ニュータウンの中の様々なルートを経由する路線バスによって結ばれている。まさに、公共交通機関を活かせば、市内各所への回遊に加えて、広域から集客する条件は整っているのである。
 ただし、整った交通条件の落とし穴は、行きやすいところは帰りやすいところでもある。来訪者の求める地域としての魅力に届かないと、滞在時間は極端に短くなること、そして再来のチャンスがなくなることを意識しておくことが重要である。
■『地』と『図』が組み合わさることで描ける多摩市の観光都市像
 2つの集客核は、来街者のニーズに応じたサービスが充実している賑わいの拠点、すなわち集客・観光においては、『図』と呼ぶことができる拠点である。一方、その2核の周辺地域においては、多摩ニュータウンの暮らしの舞台が広がっている。
 建設以前の原地形の多摩丘陵の痕跡が随所に残るとともに、ニュータウン建設時においては、最先端・新鋭の都市計画・都市デザインの考え方が投入された都市インフラ施設等が整備され、時の経過とともに自然に馴染み、現在ではひっそりと住民の用に供されている。例えば、尾根筋を通る街路や100を超える人道橋、丘からの風景・眺望と特徴ある公園、坂と曲線を活かした奥行感のある暮らしの景等、注意深く観ると、随所に往時の先進的なまちづくりの技術を感じ取れるシーンに出会うことかできる。
 一見すると地味ではあるか、これらの『地』の風景が整っていることで、相乗的な効果として、先の集客核の『図』の賑わい拠点が引き立ってくるのである。このように、多摩市には、集客・観光としての『地』と『図』が整っているからこそ、観光都市としての将来像である『地図』が完成するのである。
■ 観光まちづくりの多様な担い手・多摩市で学ぶ若者たちの存在
 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、都内並びに周辺地域においては、大会を契機としてポスト五輪をも意識した観光による地域活性化を標榜している地域が多くみられる。ご当地への集客・観光を進めようとする取組みであり、これまで集客・観光に直接的に関わってこなかった人材を登用して盛り立てようとする取組みも見られ始めている。一方で、まちづくりの分野においては、人口減少時代を迎えて地方創生の御旗の下で、「市民協働」や「住民自治」の方向へと向かっている。
 これらの動向を重ね合わせ、日常空間を新たな集客・観光のプログラムとして創出していくにあたっては、観光分野とまちづくり分野の融合が求められてきているのである。
 多摩市には生活を支えている様々な市民活動団体の活気ある活動が展開されるとともに、多くの大学のキャンパスがある。地方都市等を中心に若者の来訪や活動への参画を期待し引き合いが競合化している中で、多摩市には市内に観光まちづくりの人材が、観光まちづくりの現場での活躍を待っていると考えてみると、今後の多摩市の観光まちづくり展開に大いなる期待が寄せられる。大学キャンパスの学食めぐりラリー、キャンパスお花見ツアー、プチ博物館巡り・・・等、若者たちのアイディアは、大人の常識という名の既成概念に縛られない自由さを持っている。この4月、そんな学生が、全国から多摩市に4年間の期間限定ではあるが、移り住んでくるのである。


帝京大学経済学部観光経営学科 教授 大下 茂

(地域活性化伝道師(内閣府)・地域経営の達人(総務省))