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「知って・愛して・多摩市 」Vol.7 多摩市のみどりがもたらす恵み(その2)

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

 一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

 7回目の今回は、前回に引き続き多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会委員を務めていただいている、東京大学大学院農学生命科学研究科助教 曽我 昌史先生から見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

 そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

多摩市のみどりがもたらす恵み(その2)

東京大学大学院農学生命科学研究科助教 曽我 昌史

 

 前回に引き続き、今回のコラムでは、身のまわりの緑が持つ様々な健康効果についてお話したいと思います。

身近なみどりと病気の関係

 緑に触れることは、一時的な癒しやリラックス効果をもたらすだけではありません。最近の研究から、日常的に緑と関わり合うことは、肥満や高血圧、糖尿病、うつ病、循環器系疾患などの発症を抑える効果があることが分かっています。2015年にシカゴ大学の研究チームは、カナダのトロント市内の街路樹(53万本)の分布データと、3万人を超える住民を対象にした健康に関するアンケート結果(健康状態の自己評価や心血管代謝リスクや精神疾患の度合いを聞き取った)を分析しました。その結果、街路樹が1街区当たり10本増えると、健康状態の自己評価が向上し、世帯年収が1万ドル増加する、あるいは7歳若返るのと同等の効果があることが分かりました。同じく1街区当たり11本の街路樹が増えると、その地区の住民の代謝性疾患(心臓病、糖尿病、肥満など)のリスクが低下し、健康状態の自己評価は顕著に増加したといいます。

 同様に、豪州クイーンズランド大学の研究チームは最近、ブリズベンの居住者約1000人を対象としたアンケート調査を実施し、緑地の利用頻度や利用時間が多い人ほど、高血圧になりにくい、抑うつ症状が低いことを突き止めました。彼らの試算によれば、一週間に30分以上緑地に訪問することで、うつ症状と高血圧の罹患率をそれぞれ7%、9%減少させることができるといいます。これらの病気には、多くの先進国で毎年多額の医療費が使われていることを考えると、都市緑地は医療費削減に大きく貢献できるかもしれません。この他にも、東京医科歯科大学が行った研究では、居住地周辺の緑地の量は都市住民の寿命と関連することも報告されています。こうしたことから最近では、予防医学(病気になった後にそれを治すことより、病気を防ぎ健康を維持するという考え方)の観点から、身近な緑地や自然体験の重要性が見直されています。

認知機能の向上

 最近の研究から、日常的に自然と接することは私たちの認知機能(記憶、思考、計算などの知的な能力)にも良い影響をもたらすことが、明らかになってきています。2008 年に米国ミシガン大学の研究チームが行った心理実験では、樹林地に一定時間滞在した人は、そうでない人と比べて、数唱課題(集中力や短期記憶力を測る課題)を行った際により高い正答率を示すことが報告されています。Kaplan が提唱した「注意回復理論」によれば、森や林など自然の中に身を置くことは、日常生活で酷使されている方向性注意(物事に対して向ける自発的注意)を緩和させる機能を持つとされており、このことが認知機能の一時的な向上をもたらしたと考えられます。

 また最近では、子供の発育の面からも、自然体験の重要性が認識されています。より多くの緑に囲まれて生活している子供は、そうでない子供と比べて、認知機能の発達がよりスムーズに進むことが分かってきたためです。バルセロナにある環境疫学研究センターの研究チームは最近、長期的な自然とのかかわりと子供の認知能力の発達の関係を調べるために、大規模なコホート調査(人口集団を追跡する疫学調査)を実施しました。その結果、小学校入学前・低学年のころに住んでいる環境の緑の豊富さが、子供の認知能力の発達に正の効果をもたらすことが分かりました。この他にも、学校周辺の緑の豊富さが、子供の学業成績に正の影響を及ぼすことを示すエビデンスも最近になって続々と出始めています。

緑を通して人と人との絆を深める

 身近な緑は、健全な社会(コミュニティ)形成にも貢献しています。例えば、普段から緑地へよく訪問する人は、全く訪問しない人と比べて、地域社会に対する連帯感・信頼感が強い、孤独な感情を持ちにくくなることが分かっています。さらに最近英国で行われた研究によれば、緑が多く緑地の利用が盛んになされている地域では、住民の地域社会に対する一体感が高く、その結果地域内で犯罪が起きにくくなることが示されています。こうした研究結果は、身近な緑が地域に住む人同士の精神的なつながりを維持するうえで大事な機能を果たしていることを示しています。

おわりに

 前回と今回の二回の連載を通して、都市の緑(緑地や街路樹)が持つ様々な健康効果についてお話しました。今回は紙面の都合上、自然体験と健康に関するすべての知見を紹介することはできませんでしたが、身近な緑や自然がいかに私たちの健康に良い効果をもたらすかについてお分かりいただけたのではないかと思います。幸い、ここ多摩市には身近な場所に沢山の緑が残されています。今後、緑と健康の関係を意識しながら街を歩くことで、それら身のまわりの緑に対する見方も変わるかもしれません。

東京大学大学院農学生命科学研究科 助教
曽我 昌史

「知って・愛して・多摩市 」Vol.6 多摩市のみどりがもたらす恵み(その1)

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

 一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

 6回目の今回は、多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会委員を務めていただいている、東京大学大学院農学生命科学研究科助教 曽我 昌史先生から見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

 そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

多摩市のみどりがもたらす恵み(その1)

東京大学大学院農学生命科学研究科助教 曽我 昌史

 

 皆さんは「みのまわりの緑」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか?癒し、安らぎ、リラックスなどのポジティブな言葉を連想する人が多いでしょう。実際に、緑地や街路樹など私たちの身のまわりにある緑は、私たちが健康で充実した日常生活を送るうえで重要な役割を持っています。今回と次回の二回の連載では、身のまわりの緑や日常的な自然とのかかわりが私たちにどのような健康上の便益をもたらしてくれるのか、最新の研究成果も踏まえてお話したいと思います(ここでの「健康」とは、単に病気でない状態だけではなく、生活の質や生きがい等を含めた広い意味での健康を指します)。

都市緑地が持つメンタルヘルス効果

 ここ数年、海外を中心に、緑地が人間のメンタルヘルス(こころの健康)に与える影響が盛んに研究されています。緑地を訪れることで、精神疲労が癒されたり、自分に肯定的になったり、生きる活力が養われることが分かっています。2015年に米国スタンフォード大学が発表した論文によれば、緑地の中を一時間程度歩くことで、人間の脳の前頭前野皮質(病的反すうと関連するとされる脳の部位)への血流が減少し、活動が低下し、精神状態が改善する(後ろ向きな気持ちが減少する)といいます。情報や刺激、ストレスに溢れている都市で生活する現代人にとって、日常生活でのちょっとした自然体験は文字通り「一服の清涼剤」として機能しているのでしょう。

家の中からでも感じられる緑の効果

 緑から得られる癒しの効果は、緑地まで行かなくても得られます。実際に、家の窓から緑を眺めるだけでも、人は健康になることが分かっています。1984年に、デラウェア大学の行動科学者であったロジャー・ウルリッヒ博士は、ある一つの有名な実験を行いました。この実験で彼は、同じ病院で胆嚢手術を受けた人々の術後の回復過程を記録し、術後回復と窓からの眺めの関係を調べました。具体的には、被験者を「窓から緑地が見えるグループ」と「赤レンガの壁が見えるグループ」に分けて、二つのグループで患者の行動にどのような違いが生まれるのかを検証しました。結果は非常に劇的でした。屋外の眺めが緑地だった人は、赤レンガの人と比べて、短い入院期間で退院でき、手術後の苦情が少なく、麻薬の代わりにアスピリンで自身の痛みを抑えることができました。「術後」というのはやや極端な例かもしれませんが、この他にも、私たちが無意識のうちに窓から眺めている緑は、生活の質や幸福感など様々なメンタルヘルスに貢献していることが、最近の研究から分かっています。

小鳥が多いところに棲む人は幸せ?

 家の中から得られるメンタルヘルス効果は、窓から見える緑だけではありません。2017年に英国エクセター大学の研究グループは、大規模なアンケート調査と自然環境調査を行い、家の周囲にある様々な自然的要素が人間のメンタルヘルスに与える影響を調べました。その結果、都市住民の抑うつ(気分が落ち込んで活動を嫌っている状況)のレベルが、居住地周辺の緑地の量だけでなく、「小鳥(鳴き鳥)の数の豊富さ」と負の関係であることを見出しました(英国には町中にも美しい声を持つ小鳥がたくさんいます)。この結果は、家の周囲にいる鳥を眺めたり、そのさえずりを聴いたりすることが、心の健康にポジティブな影響をもたらすことを示唆する大変興味深い発見です。日本の場合、秋になるとスズムシやコオロギが美しい音色を聞かせてくれますが、ひょっとしたら彼らの鳴き声にも「癒し」の役割があるのかもしれません。

街路樹が増えると健康になる?

 多摩市には沢山の街路樹が植えられていますが、こうした街路樹にも様々な健康効果があることが明らかになっています。2015年にエクセター大学らの研究チームは、英国ロンドンにおける大規模な健康データを用いて、街路樹の多い地区と少ない地区で抗うつ薬の処方量がどれほど違うのかを調べました。収入や年齢など健康に関連する様々な要因を調整してデータを分析した結果、街路樹の多い地区ほど抗うつ薬の処方回数が少なくなることが分かりました。1km当たり一本の街路樹が増えると、1000人あたり1.18回の処方が減るといいます。

木が枯れると、人も死ぬ

 街路樹と健康に関しては、もう一つ興味深い話があります。ことの発端は米国で2002年に発見されたトリネコの木に穴を開ける「アオナガタマムシ」という外来の昆虫です。もともとこの虫は、ロシア、中国、台湾、韓国、日本に生息しており、米国では確認されていませんでした。しかし2000年代以降、北米ではこのアオナガタマムシの分布が拡大し、多くの街路樹が枯死しました。こうした状況の中、米国農務省森林局は、枯死木の分布データと疫学データを用い、街路樹の枯死が人間の健康にどのような影響を与えるのかを分析しました。すると驚くことに、街路樹の枯死が進んだ地域では心臓病や呼吸器疾患による住民の死亡率が増加しており、この影響はアオナガタマムシによる街路樹の荒廃が進むごとに大きかったのです。彼らの試算によれば、アオナガタマムシは呼吸器系疾患による死者6113人、循環器系疾患による死者1万5080人を引き起こしたとされています。この話は、街路樹を維持することが私たちの健康にとっていかに重要であるかを物語っています。
(その2に続く)

東京大学大学院農学生命科学研究科 助教
曽我 昌史

多摩市の魅力を発信する「#多摩市広報部員」を募集しています!

イベント・トピックス No Comments

 今「丘のまち」では、市内外の多くの方々にまちの魅力を知っていただくため、多摩市内の身近なおすすめスポットや魅力あるフォトジェニックな風景など、写真と共に一緒に発信していただく「#多摩市広報部員」の募集しています。
 
 魅力を発信するためにはハッシュタグ「#多摩市広報部員」をつけて「Instagram(インスタグラム)」にて発信していただきます。発信していただいた投稿は、「丘のまち」内において集約・表示されます。
 また、同時に多摩市のおすすめ情報をメールマガジンにて受け取れる「#多摩市広報部員」の会員登録も受け付けています。「#多摩市広報部員」限定の特別な体験を提供するイベントも随時企画しており、多摩市の魅力を発信する機会を今後定期的に提供して参ります。
 一時的なキャンペーンではなく市内外の関係市民参加型の長期的な企画として会員組織化することにより、持続可能性のあるシティーセールスの取り組みの一環として推進しています。
 
 たくさんの方のご参加をお待ちしています。詳細は下記の通りです。

【目 的】 多摩市の様々な魅力を市内外に発信し、認知度向上、来街促進につなげる。
【内 容】
1.Instagram(インスタグラム)投稿の表示
「丘のまち」の中に、新たに「#多摩市広報部員」付きのInstagram投稿を集約して表示するページ
https://tamashioka.jp/instagram_tamashikouhobuin)を作りました。
魅力的な投稿については、「たま広報」など多摩市の広報媒体で紹介する予定です。

2.「#多摩市広報部員」の会員登録
「丘のまち」の中に、新たに登録フォーム(https://tamashi-oka.jp/tamashikohobu)を作りました。こちらに必要事項をご記入いただくと、「#多摩市広報部員」への会員登録ができます。
「#多摩市広報部員」に登録していただいた方には、事務局からイベント情報など、多摩市のおすすめ情報をメールマガジンとしてお届けします。中には、「#多摩市広報部員」限定のイベントの企画も検討していますので、たくさんの方のご登録をお待ちしています。

「知って・愛して・多摩市 」Vol.5 整った都市インフラが多摩市の魅力

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

 一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

 5回目の今回は、様々な地域の観光事業・地域活性化事業に関わっていらっしゃる、帝京大学経済学部観光経営学科教授 大下 茂先生から見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

 そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

整った都市インフラが多摩市の魅力~「地」と「図」から多摩市の観光都市像を描く~

帝京大学経済学部観光経営学科教授 大下 茂

 

■ 多摩は知っていても、多摩市は知られていない
 多摩川、多摩ニュータウン、天気予報での多摩地域、多摩ナンバー等、「多摩」の知名度は高い。「都心(区部)」に対する「多摩」として、知名度は拮抗している。しかし、多摩市はというと、多摩地域の中心ではないかという推測はもてるものの、正直、“これっ”といった先行する地域イメージはないのではないだろうか。キティに代表される「サンリオピューロランド」は多摩センターにあるのは知っていても、多摩市にあることを知らないで訪れている観光客も少なくない。
 先行イメージがないことは、集客・観光においては不利な条件となる。しかし先行イメージが強すぎると、新しいことに取組むには“意識の壁”となることも多いのが現実である。イメージを壊すということで、新規イメージへの方向転換に際しての抵抗は少なくなく、気がついた時には、知名度の低下はおろか、地域の活力が冷え切ってしまっていることにもなりかねない。
それから思うと、「多摩」の知名度を借りて、多摩市の地域イメージをこれから創りあげていくことは、不利というよりも逆に、建設的・創造的な知的作業といえよう。
■ 都市地域の集客・観光はすべてがライバル
 このことは、多摩市だけではない。池袋は知っていても「豊島区」は知らない。王子・赤羽・田端は知っていても「北区」にはつながっていない。蒲田・大森・羽田は有名でも「大田区」は出てこない。都市部での集客・観光を進めるポイントは、知名度の低い自治体名の知名度向上に力を入れるよりも、知名度のある集客スポットに光を当てて、それをつないで、自治体そのものの知名度向上につなげることが近道である。
多摩市には、「聖蹟桜ヶ丘」と「多摩センター」という2つの知名度のある集客核があり、広く認知されている。商業機能集積という共通性に加えて、「聖蹟桜ヶ丘」は近年ではジブリ映画のモデル地と噂されたことによる集客、そして「多摩センター」はもちろん「サンリオピューロランド」の集客により、地域外からの来訪も多い。
 この2核を前面に押し出して集客・観光イメージを高め、2核をつなぐことで周辺地域の魅力化を図り地域回遊へとつなげていく戦略である。そしてそれを可能にするものが都市観光特有の公共交通機関の存在である。
■ 公共交通機関が整っている多摩市
 「聖蹟桜ヶ丘」と「多摩センター」は、訪日外国人観光客に人気の新宿や高尾山ともつながっている。また、相模原・横浜方面や小田急沿線、多摩都市モノレールによって中央本線等の広域とネットワークできる好位置にある。さらに両核は、多摩ニュータウンの中の様々なルートを経由する路線バスによって結ばれている。まさに、公共交通機関を活かせば、市内各所への回遊に加えて、広域から集客する条件は整っているのである。
 ただし、整った交通条件の落とし穴は、行きやすいところは帰りやすいところでもある。来訪者の求める地域としての魅力に届かないと、滞在時間は極端に短くなること、そして再来のチャンスがなくなることを意識しておくことが重要である。
■『地』と『図』が組み合わさることで描ける多摩市の観光都市像
 2つの集客核は、来街者のニーズに応じたサービスが充実している賑わいの拠点、すなわち集客・観光においては、『図』と呼ぶことができる拠点である。一方、その2核の周辺地域においては、多摩ニュータウンの暮らしの舞台が広がっている。
 建設以前の原地形の多摩丘陵の痕跡が随所に残るとともに、ニュータウン建設時においては、最先端・新鋭の都市計画・都市デザインの考え方が投入された都市インフラ施設等が整備され、時の経過とともに自然に馴染み、現在ではひっそりと住民の用に供されている。例えば、尾根筋を通る街路や100を超える人道橋、丘からの風景・眺望と特徴ある公園、坂と曲線を活かした奥行感のある暮らしの景等、注意深く観ると、随所に往時の先進的なまちづくりの技術を感じ取れるシーンに出会うことかできる。
 一見すると地味ではあるか、これらの『地』の風景が整っていることで、相乗的な効果として、先の集客核の『図』の賑わい拠点が引き立ってくるのである。このように、多摩市には、集客・観光としての『地』と『図』が整っているからこそ、観光都市としての将来像である『地図』が完成するのである。
■ 観光まちづくりの多様な担い手・多摩市で学ぶ若者たちの存在
 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催に向けて、都内並びに周辺地域においては、大会を契機としてポスト五輪をも意識した観光による地域活性化を標榜している地域が多くみられる。ご当地への集客・観光を進めようとする取組みであり、これまで集客・観光に直接的に関わってこなかった人材を登用して盛り立てようとする取組みも見られ始めている。一方で、まちづくりの分野においては、人口減少時代を迎えて地方創生の御旗の下で、「市民協働」や「住民自治」の方向へと向かっている。
 これらの動向を重ね合わせ、日常空間を新たな集客・観光のプログラムとして創出していくにあたっては、観光分野とまちづくり分野の融合が求められてきているのである。
 多摩市には生活を支えている様々な市民活動団体の活気ある活動が展開されるとともに、多くの大学のキャンパスがある。地方都市等を中心に若者の来訪や活動への参画を期待し引き合いが競合化している中で、多摩市には市内に観光まちづくりの人材が、観光まちづくりの現場での活躍を待っていると考えてみると、今後の多摩市の観光まちづくり展開に大いなる期待が寄せられる。大学キャンパスの学食めぐりラリー、キャンパスお花見ツアー、プチ博物館巡り・・・等、若者たちのアイディアは、大人の常識という名の既成概念に縛られない自由さを持っている。この4月、そんな学生が、全国から多摩市に4年間の期間限定ではあるが、移り住んでくるのである。


帝京大学経済学部観光経営学科 教授 大下 茂

(地域活性化伝道師(内閣府)・地域経営の達人(総務省))

「知って・愛して・多摩市 」Vol.4「アニメを紡ぐ『たまてばこ』」

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

 一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

 4回目の今回は、多くの有名クリエーターを輩出している名門アニメ制作会社で多摩市内にスタジオを構える、日本アニメーション株式会社代表取締役社長の石川 和子さんから見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

 そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

「アニメを紡ぐ『たまてばこ』」

日本アニメーション株式会社 代表取締役社長 石川 和子

 

 私にとって「多摩スタジオ」は紛れもない魔法の「たまてばこ」でした。手のひらの文庫本の中にいた「アン・シャーリー」が、テレビ画面の中であたかも実在の人物のように描かれ成長していく様を楽しみに、本当にワクワクしながら一週間を待ちわびました。皆さんもご存知だと思いますが、TVアニメ「赤毛のアン」です。たった100グラムの小さな文庫本の黒い明朝体の文章から、あんなにもカラフルで美しい自然や風景と、生き生きとした表情の主人公たちを創り出し、いつも心を揺さぶり時に涙を誘う映像を紡ぎ出していたのです。本当に素晴らしい「玉手箱」で、私だけでなく後の娘や孫娘をも虜にしました。アニメには人を魅了し感動させる素敵な力があると私は信じています。そのアニメを制作する「多摩スタジオ」が多摩市和田にあるのです。
 
 弊社は1975年に私の父の本橋浩一が創業したアニメ制作会社です。和田にある社屋は正式には本社スタジオと言いますが、通称「多摩スタジオ」です。元々は日活の撮影スタジオでしたが、そこでアニメ制作を始めました。「フランダースの犬」「あらいぐまラスカル」「赤毛のアン」などの「世界名作劇場」シリーズが代表作で、毎週日曜夜7時からフジテレビで23年間続けて放送されてきました。アニメの代表的なジャンルとして、ファンタジー、ロボット、スポーツ、恋愛等々ありますが、弊社が得意とするのは、児童文学を原作にした日常芝居のファミリー向け作品です。
 
 今も毎週日曜夕方6時からフジテレビで放送されている「ちびまる子ちゃん」も少女漫画原作ですが、子供も大人も家族が一緒に食卓を囲んで楽しめるファミリー作品です。1990年の初回放送から29年目を迎える長寿番組です。
 
 世界名作劇場の初期の作品などは、高畑勲氏や宮崎駿氏が監督や作画を手掛け、聖蹟桜ヶ丘が舞台と言われている「耳をすませば」の監督の近藤喜文氏や、一昨年大ヒットした「この世界の片隅に」の監督の片渕須直氏も多摩スタジオに在籍していました。今のアニメ界を支えてきた大御所アニメーターを数多く輩出してきた多摩スタジオ。彼らの成長にここ多摩市の環境は大きな影響を与えていると思います。
 
 最寄りの駅は京王聖蹟桜ヶ丘駅で、新宿方面から来れば多摩川を渡ってすぐです。駅からスタジオまで歩けば約20分。駅前のビルを抜け大栗川を渡り、坂道を登って住宅や畑の小道を抜けて着きます。地形的にも起伏が激しく坂道が多い分、丘の上から見える風景は、多摩川越しの府中方面の平野群、八王子方面の高尾山と、素晴らしい眺めです。いろは坂など本当の日光の山のようです。そして、その中に金比羅宮や小野神社など歴史や日本を感じさせるスポットがありながら、駅近くにはおしゃれな今時のレストランから昔ながらの商店まで共存しています。とても多面性をもった日本の特徴を凝縮したような、歩いて楽しい街です。
 
昭和の時代、スタジオのアニメーターも駅近くの喫茶店でくつろいだり、自然豊かなエリアを散歩したり、煮詰まった頭をリフレッシュするにはとても良い環境だったと聞いています。おそらく彼らの後の作品には聖蹟桜ヶ丘の何処かしらがモチーフに使われているのではないでしょうか。現在のスタッフもみんなここを気に入っています。
 
 弊社の創業理念には「世界中の子供たちに夢と感動を与え、人間性の涵養に寄与したい」とあり、創業40周年を機に、この多摩市の子供たちにも何か貢献していきたいと思い「ラスカルこども映画祭」を多摩市との共催で始めました。まずはアニメや映画を観て欲しい。小さい時からお父さんやお母さんと一緒に、大きなスクリーンで感動を体験して欲しい。ちょっと泣いたり騒いじゃっても大丈夫な映画館デビューの機会を作りました。弊社のアニメだけでなく世界中から良質な作品を集めています。上映だけでなく生アテレコや楽器の生演奏、ダンス、お絵かき、かき氷やさんと楽しい夏のお祭りイベントになっています。多摩市の商店会やカフェ、お菓子屋さんともコラボし皆さんに盛り上げてもらっています。
 
 聖蹟桜ヶ丘では、せいせき桜まつり、朝顔市、KAOFES、せいせきみらいフェスティバルなど沢山のお祭りがあり、ラスカルも参加させて頂いています。そこで感じる市役所をはじめ、商店会、各お祭りの実行委員会の方々の多摩市への愛情の大きさに圧倒されています。こういう人たちが裏で支えているからこそ、寛げる街であるのだと感じます。微力ながらこれからもお役に立てればと思います。
 
 これからも「多摩スタジオ」という「玉手箱」から、みなさんをワクワクさせるアニメ作品を産み出して参りますのでご期待下さいませ。


日本アニメーション株式会社
代表取締役社長 石川 和子

「知って・愛して・多摩市 」Vol.3 「ピクニックのように暮らせるまち」という仮説

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

3回目の今回は、株式会社読売広告社ひとまちみらい研究センターの柿沼 裕之さんから見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

「ピクニックのように暮らせるまち」という仮説

株式会社読売広告社 ひとまちみらい研究センター 柿沼 裕之

 

 「まちの資源を掘り起こし、活かし、輝かせる」というテーマですので、多摩市の資源はどのようなもので、それを活用してどんなことができそうか考えてみたいと思います。
 

 「資源」というとあらかじめ存在しているもののように思いがちですが、最初から唯一無二の「資源」が備わっている市町村などそうないでしょう。地形や歴史に輝かしいものでもあればいいのですが、たいがいは近隣と似たり寄ったりです。だから資源は「創出するべきもの」と考えたほうがいいと思っています。地域が持つ「らしさ」や「よいところ」を見つけ、それを市民の幸せに寄与するものとしてデザイン、拡大していくわけです。
 

 では、多摩市の「らしさ」とは、たとえばどんなことなのでしょう。
 

 南多摩尾根幹線道路、通称オネカンという、多摩川周辺を拠点にするロードバイク乗りにはお馴染みの道があります。休日はロードバイクの軍団が風のように駆け抜けていきます。そのオネカンが多摩市の南側を通っていることを知ったのは、あるきっかけで多摩市の仕事をすることになってからのことでした。
 

 オネカンは走っていて気持ちのいい道です。適度に上り下りがあって、信号も、大型自動車の往来も少ない。広めの歩道にはいい具合に街路樹が植わっています。街路樹が桜のところもあり、春の時期には桜のトンネルをくぐるようにして走る。道の脇にちょこちょこ公園があり、スペースにゆとりがありそうな大学のキャンパスも見えます。そんなオネカンの体験から、多摩市は空間が広々した緑のまちという印象を持ちました。
 

 本当のところはどうかと思い、東京都の「公園調書」を調べてみたところ、やはり多摩市は豊かな「緑のまち」でした。1人当たりの公園面積で多摩市は第3位という好成績(東京都市区部)です。多摩市には一級河川の多摩川の水辺もありますから、「野外に公園や水辺などの広い憩いのスペースがある」というのは十分多摩市らしいこと、といってよさそうです。ちなみに第1位は千代田区で、広々した皇居外苑などがある一方で人口がかなり少ないためで、これは例外です。第2位は武蔵野市で、多摩市とは僅差でした。
 

この「らしさ」を活かし、「ピクニックタウン」というコンセプトでまちを活性化していくのはどうでしょうか。出かけるのが楽しくなるようなピクニックイベントが、今日はあっちの公園、次週はこっちの公園である。「公園へのお出かけが日本一楽しい多摩市」みたいなイメージですね。
 

 キッチンカーが公園に並ぶ、カレーフェスのような食イベント。陽差しが気持ちいい時期には、大きなガーデンパラソルが立っているアウトドカフェ。自然写真や写生を学ぶ青空教室。映画の舞台になった絵になる街並みがある多摩市らしい学びかもしれません。大きな音を出しても気にならない川辺には簡易な野外舞台があり、そこではブラスバンドの演奏会。多摩川で取れる魚を使っての食育BBQ。寒い時期には、友好都市である長野県富士見町から運んできた温泉を利用した「足湯」、などなど。
 

 どうでしょう、具体的にイベントを並べてみると「ピクニックタウン」のイメージが湧くでしょうか。ピクニックイベントなどで屋外へ出て自然に触れることのいちばんのメリットは、都市化や情報化のストレスから解放されることです。外へ出ることで、大人も子どもも、高齢者も活動的になりますし、楽しく集えればコミュニケーションも生まれやすい。多摩市全体が、健康的で活動的なコミュニティになっていけばすばらしいと思いました。
 

 と考え、もしかしてどこかの地域が同じようなことをやっているかもしれないと調べてみると、なんとすぐ近くの川崎市多摩区が「ピクニックタウン」を打ち出していました。驚き、焦りましたが、多摩川南側の「タマタマ連携」で大きな面の活動にしていけば双方にメリットがあるようにできると思います。
 

 「ピクニックタウン」はちょっとしたアイデアですので、実行に移すにはいくつもハードルがありますし、やり方によっても大きく成否が変わります。このアイデアをひとつのきっかけとし、市にかかわる方々が自分たちのまちの「らしさ」「よいところ」について考えを深めていただくことを期待しています。
 

株式会社読売広告社 ひとまちみらい研究センター
柿沼 裕之

「知って・愛して・多摩市 」Vol.2 私と多摩市~これぐらいがちょうどいいまち~

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

2回目の今回は、多摩市在住の女子柔道家松本 薫さんから見た「多摩市」です。ぜひご覧ください。

そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

私と多摩市~これぐらいがちょうどいいまち~

松本 薫 (57kg級女子柔道選手。ベネシード所属。ロンドンオリンピック・リオデジャネイロオリンピックメダリスト。多摩市在住)

 

多摩市との出会い
 金沢出身の私が多摩市と出会ったのは大学生の時です。一度高校進学で上京したのですが、再び金沢の高校に転校したので、東京で過ごしたのはわずかでした。再び上京したのは帝京大学に進学した時。女子柔道部に入ったことがきっかけで多摩市に住むことになりました。
 当時の多摩市の印象は「住みやすい東京」でしょうか。東京だけど都会っぽくない、というところが気に入っていました。
 

オフの日はスーパー銭湯で
 学生時代は勉強と柔道の練習・試合に明け暮れる毎日を過ごしていましたが、休日には体重調整のため、岩盤浴やサウナがある「お風呂の大様」や「竹取の湯」(スーパー銭湯)などによく行きました。もともと大きなお風呂が大好きだったので、息抜きにもなりましたが。
 

都会にあこがれた「自立」のとき
 大学を卒業してからもしばらくは多摩市に住んでいましたが、ロンドンオリンピックへの出場後は都内での仕事が増えたこと、また、女子柔道部の監督であり師匠の稲田明先生が宇都宮に移られることになったというのもきっかけになり、そろそろ自立しよう、と考えました。
 このときの「自立」の意味ですが、帝京大学柔道部や師匠の存在というのは、私にとっては「居やすい家」だったんです。居心地が良くて動けない。でも、一度外の世界を経験すること、実家を出ていろいろな経験を積むことも必要なのではないかと考えたのです。
 そしてもう一つ、実は都会にも興味があった、ということは否めません。東京に来たのだから都会の真ん中に住んでみるかな、という興味ですね。
 

多摩市に戻るきっかけ
 3年ほど都内に住んでいました。ご近所の方にもとても良くしていただいて、本当にいいまちでした。でも、結婚をして妊娠がわかったときは、出産後も柔道を続けるために、子育ての環境などを考えると多摩市がいいのではないかと思ったのです。
 もともと「いつか多摩市に帰りたい」とは考えていたので、出産する前に多摩市に転居することを決めました。多摩市で出産し子育てをしようと。住み始めて改めて思いました。やはりちょうどいいんですね、多摩市は。川があり、緑があり、公園もたくさんある。でも買い物も不便ではない。これくらいがちょうどいいな、子育てしやすいな、と思いました。
 

安心してできる子育て
 多摩市の人は本当に優しいです。ご近所の方が「お母さんは大変だから」と、子どもを預かってくれたり、野菜を届けてくれたり。東京なのに田舎みたいです。最近はお土産の交換をするほど仲良くなっています。そういう毎日を過ごしていると、都心で子育てをしていたら今みたいに柔道に復帰できていなかったのではないか、と思います。
 

家族で過ごす休日の楽しみ
 休日には親子3人で市内のスーパーに買い物に行ったり、桜ヶ丘のロータリーに向かう階段に朝日を見に行くこともあります。階段はトレーニングに最適なんです。その上朝日がきれい。多摩川の堤防でベビーカーを押したままランニングもしています。多摩市での生活を満喫しています。
 これからいい季節になるので、市内の公園にお弁当を持って遊びに行きたいです。多摩市は大きな公園がたくさんあるので今から楽しみです。
 

子育てしやすいまち多摩市
 都心と違って子どもを連れて出かけやすいのもいいところです。授乳室やオムツ替えができるところが多いのではないでしょうか。子どもを連れて都内に仕事に行くこともありますが、困ることも多いです。とにかく多摩市は「住みやすい」「子育てしやすい」の一言に尽きます。
 

柔道選手松本薫としての目標
 今は毎日練習と子育てと家事とで、てんやわんや。無我夢中で過ごしていますが、優しい人たちに助けられ、精神的にも落ち着く環境で過ごせることは本当に幸せです。
 柔道は、今年8月の「実業個人選手権」出場が復帰初戦となります。今はもう一度畳の上に立つ。試合に出ることが第一の目標です。そこから一つひとつ勝っていって、最終的には金メダルを獲ることが目標です。
 東京2020大会を目指し、母としても、妻としても選手としてもがんばりますので、皆さんぜひ応援してください。
 


松本 薫(57kg級女子柔道選手。ベネシード所属。ロンドンオリンピック・リオデジャネイロオリンピックメダリスト。多摩市在住)

「知って・愛して・多摩市 」Vol.1 多摩市が「住みたい街」に選ばれるためには?

知って・愛して・多摩市(著名人リレー執筆) No Comments

 
一口には語れない多摩市の魅力を、それぞれの専門分野でご活躍の皆さんから、語っていただく「知って・愛して・多摩市」を始めました。

SUUMO編集長の池本洋一さんを皮切りに、概ね1週間に1回、計8人の方から見た「多摩市」を掲載いたしますので、ぜひご覧ください。

そして、ちょっとでも興味を持ったら一度足をおはこびください。

 

多摩市が「住みたい街」に選ばれるためには?

株式会社リクルート住まいカンパニー SUUMO編集長 池本 洋一

 

 多摩市95位。今年2月末に発表した「SUUMO住みたい自治体ランキングの2018関東版」の結果です。20歳~49歳の関東在住7000人に住みたい駅と自治体を1位~3位まで選んでもらい集計しました。多摩市はというと、うーん上位に来ておりません(苦笑)。周辺の自治体みてみましょう。立川市32位、府中市39位、調布市49位、八王子市53位、川崎市麻生区84位、川崎市多摩区97位、国立市100位、国分寺市101位。ちなみに1位は港区、2位は世田谷区です。自治体ごとに人口が全然違いますので順位で一喜一憂する必要はないです。ただ傾向を知っておくと、多摩市がどんな魅力を増せばランキングの上位に顔を出せるかのヒントが見えると思いますのでそこを紐解いてみたいと思います。

 
 1つは「都心一極集中」。自治体ランキングのTOP10すべてが23区でした。シングル世帯増、共働き増に伴い交通利便性を重視する傾向が高まりました。2つめは「郊外の中核集中」。20位までみると、11位横浜市中区、12位鎌倉市、13位さいたま市大宮区など。また住みたい街を「駅」で聞いたランキングでは、横浜が1位、大宮が9位、浦和が10位でした。東京一極集中といわれますが、郊外エリアでは「中核都市への人気集中」が起こっています。ではどんな条件が備わっていると人気の中核都市になれるのでしょうか?

 
 それは「食・遊・住・学+仕事のワンストップ」。下記をご覧ください。2018年は調査方法を若干変えたので、同じ調査手法の2016年と2017年で比較しました。郊外の人気上位駅をみると、立川も海老名も大宮も柏も、駅前に大型商業があり、映画館などのアミューズメントがあり、足元に商店街もあり、習い事も駅近くに多種多様にそろっている。かつ複数路線が乗り入れて交通の便もいい。また第三次産業が発展しているので地元に仕事もある。さらにおしゃれや高級といった印象が強くないので(笑)、賃料や物件価格もプレミアムが乗っている感じがしない。今の若い世代は「ブランド」より「等身大」「実質的価値」「コスパ」を重視する傾向があります。

 ちなみにこの4都市、住むというより、遊びに行く街では?という声もあります。「立川は遊ぶ場所、住むのは隣の国立」なのではという。でも今の若い人はその利便性を日常生活で享受したいという人たちが増えているようで、それが郊外の中核都市の人気を生み出しています。

 
 次に「多摩市と周辺市の住みたい理由比較」をご覧ください。街を選んだ魅力を複数回答してもらっています。自治体ごとに該当項目を何%の人が回答したかを集計したものです。多摩市の強みは、自然が身近、緑地・公園といった指標です。専業主婦型世帯が主流の時代は、自然と都市の融合的な街が好まれており、その中心として多摩ニュータウンや港北ニュータウンがありました。ただ最近は、共働きが増え、交通利便と商業利便を求める声が強くなり、ワンストップですべてが済む時間コスパの良い街が好まれるように変わってきています。また赤羽19位、北千住21位のように多種多様な人が住んでいる街も上位に来ており、均質性から多様性という傾向もみられます。

 では、多摩市が住みたい街として選ばれるには?を考察してみたいと思います。ここでは主に計画されたいわゆる多摩ニュータウンエリアを中心に書きます。

 
 ズバっと言っちゃいます。つい先日、編集長!今後見据えてオススメな街はどこですか?と聞かれたときに、多摩センターと答えたのです。ところが記者からは『多摩センターですか!子育て真っ最中の身からすると「親世代が憧れた住宅地」、何だか一昔前の家族像が投影された街のよう。正直魅力を感じづらいのですが……』。これ割とメジャーな声ではないかと推察されます(苦笑)。でも私はこう返しました。「みんなが都心を向いている今だからこそ、オススメしたい。今となっては賃料に割安感があるし、ファミリー視点で徹底的に計画開発されたこの街は、本来すごく『子育てしやすい』場所です」と。

 
 大きなペデストリアンデッキがあり、歩道と車道が分かれ、緑が配された街は安心・安全に、スピーディーに子どもの送り迎えが可能です。このインフラの中で、保育園に入りやすく、保育料に大きな補助が出て、遊具ある公園にカフェなどが併設され、安く楽しく過ごせる街であれば、共働きコスパ世代はまた目を向けてくれるのではないでしょうか?フォトジェニックで楽しげな遊具で遊ぶ風景はSNS発信で拡散されます。
交通利便性は朗報が出ましたね。小田急線の複々線化が完了し、小田急多摩センターから新宿へ最速で33分、朝のラッシュ時でも40分と最大14分も短縮。新宿へ直通の『通勤急行』『急行』が新設されて、小田急多摩センター始発もできる。これは大きいです。
商業施設については、数は立川などには及びませんので、テナントバリエーションまで含めた丁寧なPRがあってもいいかもしれません。多摩センター駅付近は、ユニクロ、ニトリはじめとしたコスパのよいナショナルチェーンが豊富。それに南大沢のアウトレットモールや聖蹟桜ヶ丘の百貨店と組み合わせていく。塾の数や習い事のバリエーションPRも欠かせません。また理想的には、多摩センター駅付近で、週末に定期的に「マルシェ」「ファーマーズマーケット」が開催されるといいですね。地元の野菜やパンやチーズやお菓子などが並ぶと人気の街になりそうです。

 
 最後にシビックプライドについて。先日ドイツに街づくりの勉強に行ってきました。驚いたのは多くの市民がボランティアで2つか3つ地域を支える活動をされていたこと。子供たちにスポーツやゲームを教えたり、公園整備の議論に関わったり、子供やお年寄りの送り迎えのお手伝いをしたり、先のマルシェ開催のお手伝いをしたり…。計画都市の弱点は人が多く住んでいなかったので街に愛着が湧きにくく関わりを持つ人が少なくなりがち。でもだからこそその弱点を覆したいですね。市民の皆さんが「計画都市日本代表」の多摩市プライドでもって、地域での活動に参加する街になったら、なんと素敵なことかと思います。住みたい街に選ばれるには「街に魅力があること」+「発信されること」が大事です。魅力は商業、保育、介護などの都市機能に限らず、街で暮らす人の楽しそうな姿、イキイキした姿も大切。暮らす人の魅力はメディアを惹きつけます。アピールするものができたら教えてください。取材に参りますので(笑)。

池本 洋一
株式会社リクルート住まいカンパニー
SUUMO編集長

「(仮称)市民と共に描く永山駅周辺再構築ビジョン」のワークショップメンバー募集中!(募集は終了しました)

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市内在住者・在勤者・在学者はもちろん、駅周辺再構築やニュータウン再生に興味のある方、特に次世代を担う若者を広く募集します!!!
(募集は終了しました)

市では、平成30年2月に策定した「多摩ニュータウン リ・デザイン 諏訪・永山まちづくり計画」において、永山駅周辺の再構築を目指しています。つきましては、再構築に向けたビジョンを考えるワークショップに参加していただけるメンバーを募集します。

1.活動内容等について

(1) 活動期間 平成30年6月中旬~平成31年2月下旬
(2) 主な活動  参加いただくのは、下記の通り。
※ 日程は未定ですが、月~金曜日の夜間、または土日祝を予定しています。

 ① ワークショップ(計4回程度を予定)
 ・第1回:平成30年6月17日(日)14時~(予定 3時間程度)
 ・開催場所:グリナード永山 グリナード1号ホール(2回目以降も市内駅周辺の公共施設等で予定)
 ② フィールドワーク(1回程度)
 ・永山駅周辺をグループごとに歩き、課題や魅力を調査します。
 ③ 街頭アンケート調査(1回程度)
 ・駅利用者や駅周辺施設利用者に対して、アンケートを実施します。
 ④ 多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウムへの参加
 ・市では、ニュータウン再生について市民と共有を図るために、毎年2月頃にシンポジウムを開催しています。
 ・今年度は、ワークショップでまとめた「(仮称)市民と共に考える永山駅周辺再構築のジョン」を発表する予定です。
(3) 報酬等 無償

2.応募について

(1)募集人数 20人程度
(2) 応募期間 平成30年4月9日(月)から5月25日(金)まで
(3) 応募方法 ■下記項目を記入し、メール(ntsaisei@city.tama.tokyo.jp)にて、お申し込みください。
 ① 氏名
 ② 年齢
 ③ 性別
 ④ 住所
 ⑤ 所属(学校名・会社名等)
 ⑥ 電話番号

【問い合わせ先】

多摩市都市整備部都市計画課ニュータウン再生係
電 話:042(338)6959
FAX:042(339)7754

「多摩市の”橋”をめぐる魅力発信プロジェクト」始動!~ありふれた日常生活を観光資源へ~第1弾イベント

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 東京都と東京観光財団は、都内の各地域から地域資源を活用するためのアイデア(企画案)を募集し、旅行者誘致につなげていく「地域資源発掘型実証プログラム事業」を実施しています。このたび、多摩市・京王電鉄㈱のアイデアが採択され、多摩市の“橋”の魅力を広く発信するためのプロジェクトが始動します。

1.目的
 多摩丘陵の自然と地形を活かし計画的に歩車分離で開発された「多摩ニュータウン」地区を中心に、多摩市内には180箇所以上もの“橋”が存在しています。日常生活では意識することのない、ありふれたインフラ設備である“橋”について、その魅力を再認識し「観光資源」として活用するための取組みです。

 橋の構造等の「橋そのもののおもしろさ」と、橋があることで創り出される「魅力的な風景」という両面からアプローチし、その魅力を対外的に発信することで、幅広い世代と様々な属性を持った方々に広域から多摩市に来ていただくことを目的として企画しました。

2.今回実施する取り組み
(1)多摩の魅力的な橋「撮影スポット」発掘モニターツアー
(2)「多摩の魅力的な橋」スマートフォン(SNS)写真教室
 ※ 詳細は下記の募集要項をご確認ください

3.今後の取り組み
(1)橋のWebサイト公開
(2)橋のスタンプラリー
(3)フォトコンテスト「橋のある風景」 等
 ※ 今後の取り組みに関する詳細は、内容が決まり次第、随時情報発信していく予定です

 一連のプログラムを通し、多摩市の“橋”と魅力的な自然の存在を広く認知いただくことで、「都心至近でも自然と素敵な風景を楽しめる場所」として多くの方に訪れていただくことを期待しています。

【問い合わせ】
 まちづくりラボ・サルベージ株式会社 担当 岩田
 電話:042-851-8316(平日9:30 ~ 17:30)