グラン・クリュ
“多摩市のシンボル”になりたい
多摩センター駅を背にして街路樹の美しい青木葉通りの緩やかな坂道を上がって行くと、まもなく左手に南フランス風の味わいのある建物が見えてくる。
ここが“純生ロール”を始め、数々のケーキの名作を生み出している「グラン・クリュ」の菓子工房兼本店である。創業当初から販売している“純生ロール”が未だに“看板商品”であり続けている、その人気の秘訣をお伺いすべく、オーナーシェフの石塚さんにお話をお聞きした。
「ロールケーキの第一人者」と呼ばれて
石塚さんが多摩市に「グラン・クリュ」を開店して今年で創業19年目となる。石塚さんは長年、都心や下町などのフランス料理店で洋菓子専門のシェフとして修行をされて来たので、自分のお店を出店する際には「空気と水がきれいで、緑の多い土地にしよう」と心に決めて、多摩市近隣で物件を探したという。「グラン・クリュ」の意味はフランス語で“上質なもの”“優れたもの”を指しており、緑が多くて自然の豊かな多摩市に“敬意を表して”こう名付けた。
開店して間もなく“純生ロール”と名付けたロールケーキが大ヒットして、一躍その名が多摩地域だけでなく関東全域に知られることとなった。その後、関東全域でロールケーキが大流行したので、「ロールケーキの第一人者」と呼ばれたこともある。多い日には最高で1日1.800本も売り切ったことがあるという。
ロールケーキを始め、ケーキの材料には出来るだけ最高品質のものを使うようにしている。特に重要なのがケーキの“骨格”に当たるという卵で、良質な卵を使うとスポンジの香りがまるで違ってくるという。
美味しい果物を求めて
ケーキを作る際に“季節の果物”をふんだんに用いることによって、四季を明瞭に表現できるという。ケーキに使う果物は直接、生産地に足を運んで農家さんと契約を結んで、なるべく“完熟”に近いものを提供してもらっている。
さらに石塚さん自身もこの5~6年間は休みの度に山梨県の“ぶどう農家”さんや“桃農家”さんの所に通ってお手伝いをしてきた。その内に「自分のお店で使う果物を自分で生産したい」という思いから、2011年4月には山梨県北杜市に本格的な果樹園を開設した。
約40アールの広大な敷地には50mと80mの巨大なビニールハウスと50mものブドウ棚が並び、プラムやサクランボウなど15種類ほどの果物を生産している。果樹園での仕事は想像以上に大変だったものの、自分の畑へ行き“もの言わぬ”果樹に接していると“心の洗濯”になるという。この石塚さんの活動を通して、山梨県からは「やまなし大使」として任命されたという経緯もある。
スタッフへの思い
元々、高校時代にはプロの野球選手を目指していた石塚さんが、その後、お菓子の道に進むようになったのはひとえに家庭の事情によるもので、高校を卒業と同時に有名和菓子店の洋菓子部門に就職すると共に、一人暮らしで極貧生活を味わったという。この時の辛い経験から「色々なものを我慢しているとそれがその人のバネになる」ということを実感した。
スタッフを採用する際にも実家の遠い地方出身の子たちを積極的に採用して、彼らには自分でアパートを借りさせて、給料のやりくりをさせている。その理由は「将来、彼らには独立してほしいから」というもので、実際にこういった下積み生活がある若者ほど、その後、急激に成長していくのだという。
「人生は他人任せではダメ。何でも自分の努力次第」「例え結果が出なくてもそこに費やした時間は残るし、何事も勉強になる」などの珠玉の言葉を熱く語る石塚さんの作るケーキには彼の人生観そのものが表れている。
- 店名
- グラン・クリュ
- 住所
- 〒206-0033 多摩市落合3-11-2
- 連絡先
- 042-376-0141
- 営業時間
- 9:30 – 19:30
- 定休日
- 月曜日
- URL
http://www.kanto-cake.com/tokyo/grandcru/